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2020.5.21

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【Vol.11 過去の未公開記事を公開!】中部山岳国立公園で遊ぼう!【リノカで行こう】

2020.5.21

連載:Renoca Rent

過去の未公開記事を公開!

四季折々の日本中を遊び場にして、自由な外遊びの楽しさをお伝えしているこの連載。 ありがたいことに、大変ご好評いただいているのですが、実はタイミングがずれてしまい、掲載できていなかった記事があります。。。こんな時だからこそ、お読みいただきたい! というわけで、未公開の記事を一挙公開していきます!
まずは、昨年のゴールデンウィークに、中部山岳国立公園で山スキー、キャンプ、温泉、温泉、温泉! を楽しんだ様子をお届け! 有益な情報も、ワクワクもたっぷり詰まっています。 今はおうちでこの連載を読んで、事態が落ち着いた暁には、たくさん遊びに出かけましょう!! あ〜温泉行きたい!(by リノカジャーナル編集部)

この季節しか味わえない北アルプスへ

この季節しか味わえない北アルプスへ

待ちに待った連休ではあったが、いざ連休に突入すると「さて何からはじめようか?」と戸惑う。とりあえず家の掃除などを済ませ、長い休み明けに追い込まれるだろう仕事の整理を、安心感という心地良さと引き換えに連休前半の日数を費やした。
ニュースを見ると、連休後半は行楽日和が続くそうだ。この予報を待っていたのだ。「よし、よし」とほくそ笑みながら、7:3の割合で遊びクルマと化しているハイエースの荷台を車中泊モードに整え、寝袋などのキャンプ道具と、山スキー用の装備一式を雑に詰め込んだ。
目指す場所は、中部山岳国立公園内にある白馬鑓温泉。標高2,100mに湧く正真正銘の源泉かけ流し温泉で、7月中旬頃から温泉のまわりに山小屋が建ち、短い夏と秋の間だけ、たくさんの登山者で賑わう場所だ。冬の間は、解体された小屋の建材と共に雪の中に埋もれているが、春の今頃は残雪の中から露天温泉が先に姿を現す。まだまだ雪が多い北アルプスをスキーですべるついでに、温泉も楽しんでしまおうというプランである。

渋滞にゴールデンウイークを感じながら

急ぐ旅でもないし、午前9時にゆっくりと家を出た。中央道に入る前から渋滞情報がうるさいくらいにアラートしている。みんなゴールデンウイーク後半の好天を狙ってお出かけなのだろう。サービスエリアも外までクルマが溢れ、トイレも長蛇の列だ。順調に走れるようになったのは、甲府を過ぎた頃からだった。左には南アルプスが連なり、正面右に八ヶ岳が見える。
ふたつの大きな山塊を過ぎ、長野自動車道に入る前に、お気に入りの諏訪サービスエリアに入った。ここには冷めても美味しい絶品のおこわが売っている。山に入る時はいつも日の出と共に動くので、前日にお弁当を買っておくようにしているが、諏訪サービスエリアのおこわが最近のマイブームなのである。

諏訪サービスエリア内にあるおこわがおいしいお店

諏訪サービスエリア内にあるおこわがおいしいお店

ホカホカもおいしいけど、冷めてもおいしいおこわ

ホカホカもおいしいけど、冷めてもおいしいおこわ

車中泊とキャンプで2泊3日を楽しむ

ドライブ中に癒しを与えてくれた満開の桜並木

ドライブ中に癒しを与えてくれた満開の桜並木

安曇野から国道147号をひたすら北上して白馬を目指す。途中から国道148号に変わる頃に、車道の右側に木崎湖と青木湖が順番に見える。ここには静かなキャンプ場がたくさんあるようだ。明日は日の出と共に出発なので、今日は白馬岳登山口となる猿倉荘の駐車場で車中泊し、下山後の明日はキャンプ場でのんびりする予定だ。
道のいたるところには桜が咲き乱れている。関東ではすでに散ってしまったが、ここでは今がピークのようだ。白い世界の雪山も楽しみだが、下山後の新緑と桜の中でのキャンプも今からすでに楽しみだ。

お買い物は道の駅白馬が便利

神城駅手前に道の駅白馬がある。白馬エリアに入ってから初めて出合う道の駅で、地元食材もたくさん扱っているので人気が高い。駐車場もすでにクルマでいっぱいだ。必要な食材と夜のお酒を購入し、道の駅白馬の敷地内にあるスイーツ屋に向かったが、この日は残念ながらお休みだった。「村のパティシエが届ける」というキャッチフレーズで、信州の果物と野菜のスムージーやスイーツなど販売しているおすすめスポットだったが、とても残念である。オープン時に出合ったならば必ず立ち寄ってみてほしい。地元の新鮮食材だからこそ得られる味わいが、上品な甘さと共に口の中に広がることだろう。

白馬のステンドガラスが目印の道の駅白馬

白馬のステンドガラスが目印の道の駅白馬

登山口に向かう前に温泉へ

源泉がドバドバあふれる若栗温泉

源泉がドバドバあふれる若栗温泉

白馬界隈には数多くの温泉施設がある。その中でも夜遅い20時まで日帰り入浴可能なおすすめの温泉が、『若栗温泉乗鞍荘』だ。ひと昔前は源泉の温度が高い熱湯で有名だったが、震災を境に湯温が落ち着き、快適な源泉かけ流し温泉に変貌を遂げている。泉質は硫黄感をもつ鉄泉で、体の芯まで温まる。湯量も申し分なく、湯船からドバドバと溢れ出ている鮮度抜群の極上湯だ。ついつい溢れ出る湯の上で横になってしまうくらい気持ちがいい。

夜の食事は白馬駅の近くで

白馬駅の近くにはたくさんの飲食店があるが、その中でも特に人気が高いお店をご紹介したい。
まずひとつめが、白馬駅の正面の道を登った右にある『炭火焼肉深山』だ。いつも入店待ちで並んでいることが多く、要予約としておきたい。「白馬で一番おいしい焼肉」と評判で、地元の人にも大人気だ。
もうひとつは、白馬駅から北に3キロほど行った左にある『だいほういん』だ。そばが有名だが、日本海でとれた魚料理も絶品で、お酒の種類も豊富なので、ぜひ大人数で訪れてみてほしい。

お肉もホルモンもおいしい白馬代表の焼肉屋

お肉もホルモンもおいしい白馬代表の焼肉屋

魚料理とお酒がおすすめの和食屋

魚料理とお酒がおすすめの和食屋

登山者で賑わう猿倉荘駐車場

ベッドモードにしたハイエースは適当に荷物を積んでも広々

ベッドモードにしたハイエースは適当に荷物を積んでも広々

お風呂も入ったし、お腹もいっぱいになったし、いよいよ明日の登山に向けて車中泊ポイントに移動だ。目指す場所は、白馬岳の登山口となる猿倉荘の駐車場。明日の朝は5時に起きてスキーの準備をして、往復約9時間の山旅となる。標高が高くて肌寒いが、厚手の寝袋と大の字でのびのび寝られるハイエースの荷台のベッドがあれば、ここはもう5つ星のホテルと同じ。誰にも邪魔されない自分だけの旅の基地だ。

スキーを利用して山上の温泉へ

山スキーという遊びがある。バックカントリースキーともいうが、使う道具は一般的なスキー板と同じだ。違いは、土の上を歩けるようにしてある専用ブーツと、雪の上ですべり落ちないようにスキー板の滑走面に貼り付けるシールといわれる道具が追加されるだけ。はるか昔は、アザラシの革をスキー板の裏に貼って歩いていたらしいが、今は化合繊維で作られている。登る時はシールを貼り、すべる時は剥がすというだけのシンプルな道具だ。 猿倉駐車場のすぐ上からスキーを履いて歩く。今年は雪が多いようだ。
登山道をそのまま進むと白馬岳の大雪渓に出てしまうので、鑓温泉を目指す人は途中から小日向山へ向かう。小日向山のコルを越えると目の前には大パノラマの白馬連峰が広がり、心底「来てよかった」と思わせてくれる景色がそれまでの疲れを癒してくれる。目指す温泉の場所もここから見えてる。谷を一度すべり下りて、もう一度シールを貼り直して温泉まで登るのだ。

猿倉荘駐車場の脇からスキーを履いて登り始める

猿倉荘駐車場の脇からスキーを履いて登り始める

小日向山のコルで白馬鑓温泉を見る

小日向山のコルで白馬鑓温泉を見る

白馬鑓温泉を目指して最後の登り

白馬鑓温泉を目指して最後の登り

天上の温泉はひと味もふた味も違う極上だった

雪の中に顔を出した白馬鑓温泉

雪の中に顔を出した白馬鑓温泉

2,100mから見える景色は格別だ

2,100mから見える景色は格別だ

ようやく温泉に辿り着いた時には、脚はフラフラ、お腹ペコペコ。心身ともに充実というか、とてつもない疲労感だった。
しかし目の前に現れた温泉を見てしまうと、そんな疲れなんてどこかに飛んで行ってしまうから不思議だ。温泉が近づくにつれて増していく硫黄の香りと、ドバドバと溢れ出るエメラルドグリーンの湯の色。そして別天地を想わせてくれる絶景の展望。まさに中部山岳国立公園の核心部であり、真骨頂の景色!
本当に来てよかったと思える幸せな時間が訪れた。

下山後はのんびりキャンプ場へ

陽も傾きつつある15時に下山し、今日の夜を満喫するためにキャンプ場へと急いだ。白馬に向かう途中にあった木崎湖と青木湖にはキャンプ場がたくさんあるが、人があまりいない場所に行きたかったので、青木湖キャンプ場を目指した。国道148号沿いには夜遅くまで営業するイオンもあるので、キャンプの食材には事欠かすことがない。
標高の低い青木湖キャンプ場には、まだ桜が咲いていて、湖面に面した林の中で過ごす時間が遅く流れているように感じた。クルマの横にテントを張り、夕焼けの下で食材を料理する贅沢な時間だ。

桜の樹の下でテントを建てる贅沢もよい

桜の樹の下でテントを建てる贅沢もよい

温泉巡りで旅の締めくくり

湖畔に差し込む朝日が美しく、桜を見ながらのドライブも格別だ。今日は、温泉三昧で体のバランスでも整えてみようと少し早起きして、小谷村を目指した。
白馬村を過ぎて姫川沿いに北へとクルマを走らせる。有名な栂池高原スキー場や白馬コルチナスキー場を過ぎたトンネルの出口の信号に、「小谷温泉こちら」という看板がある。その看板に従って山道を登ると、日本の原風景の村風景が左右に広がり、そのさらに奥に有形文化財の建物を守る『山田旅館』がある。道は一本道なので迷うことはないだろう。
山田旅館の温泉は15時までなら日帰り入浴も可能だ。加水、加温、消毒することなく、溢れ出る温泉をそのまま味わえる源泉かけ流し湯で、湯量、湯温共に最高の状態で管理されている。お湯ひとつから見ても山田旅館のこだわりが伝わるものだ。

湖畔のまわりにもまだまだ桜が咲き乱れていた

湖畔のまわりにもまだまだ桜が咲き乱れていた

谷間に立ち並ぶ小谷村の風景

谷間に立ち並ぶ小谷村の風景

有形文化財に登録されている山田旅館

有形文化財に登録されている山田旅館

次なる温泉へ

次なる温泉へ

いい感じに体が温まったので、姫川沿いにある隠し湯に行ってみることにした。大きな招き猫の目印があるのだが、住職のご主人いわく「あんまり人がこないんだよ」とのことだが、ゴールデンウイークの今はどうだろうか。
さっそく小谷村を下りて、国道148号をもう少し北上すると、トンネル手前の右に白い招き猫の置物が見えるので、それを目印に川の近くまで未舗装の道を下りて行く。相変わらずバラック的な作りの木造小屋に、『猫鼻の湯』と書かれたかすれ文字の手書き看板が入り口にかかっていた。地元の住職が掘った温泉で、知る人ぞ知る場所として愛好家たちに人気だ。驚いたことに、入り口に靴がたくさん脱いであった。さすがゴールデンウイークだ。こんなさびれたマニアックな温泉にも人で溢れている。右側の広場を見ると、キャンプ客も3組ほどいる。ここだけの話、ご主人と仲良くなると温泉キャンプも可能になる秘密の場所なのである。

これが目印なのだが、なかなか勇気がいるだろう

これが目印なのだが、なかなか勇気がいるだろう

ボロボロだが、温泉好きの住職の温かいおもてなしの心が伝わる

ボロボロだが、温泉好きの住職の温かいおもてなしの心が伝わる

広大な敷地には露天風呂もある

広大な敷地には露天風呂もある

最後は道の駅へ寄って帰路へ

ふたつの温泉で火照った体を休ませようと、帰り道の『道の駅小谷』に寄った。ゴールデンウイークの賑わいを見せる道の駅でそばをすすり、アイスクリームを買って帰路につく。ちなみに道の駅小谷にも『深山の湯』という温泉施設が併設している。冬の寒い季節の休憩がてらによく利用させてもらっている温泉だ。ここではいつからか銀色に輝く恐竜のモニュメントが建ち、国道148号のランドマークにもなっている。そんな親子恐竜を横目に見ながら、長いゴールデンウイークの思い出をお土産に、都会の喧騒へとクルマを走らせた。
泊まる場所も、食べる場所も、お風呂もない。自由はあるけれども、実は不自由も多い。そんな車中泊の旅がやめられない理由は、発見が多いことだ。車中泊ができるクルマが一台あるだけで、旅に奥深いおもしろさが加わる。そのおもしろさを知ってしまったら、そう簡単にやめられるものではない。さぁ、次のロードトリップはどこの国立公園に行こうか。今から楽しみだ。

温泉も併設している道の駅小谷

温泉も併設している道の駅小谷

恐竜の化石が出たとのことでモニュメントも建つ

恐竜の化石が出たとのことでモニュメントも建つ

道の駅小谷中にあるおすすめの屋台

道の駅小谷中にあるおすすめの屋台

金田剛仁さん

著者:金田剛仁KANEDA KOJI

源流ライター。1976年7月生まれ、かに座、O型。
2004年のゲリラキャンプで山に目覚め、冬は山スキー、春は山菜、夏はイワナ、秋はきのこを追いかけながら、いつの間にか深山幽谷を旅する源流師となる。日本山岳ガイド協会所属。アウトドア中心の制作会社ハタケスタジオ代表取締役。前人未踏の人力チャレンジをサポートする人力チャレンジ応援部代表。