今度はどんな車中泊をしようかな〜
今回は、青森県 十和田八幡平国立公園でのスキーの様子をお届け!(取材は3月上旬) 蒸し暑い今日この頃ですが、美しい雪景色の写真を眺めていると、涼しい気持ちになってきますね。で、実は車で日本を旅する魅力を金田さんにご紹介頂いてきたこの連載、実は今回で最後! 最終回では、お馴染みの超ベテランアウトドアマスターであり、車中泊名人のご三方に、車中泊について語っていただきました! 世界中がインドア生活を続ける今日、「外遊び」の意味、その本当の豊かさを捉え直す機会となっています。日本の自然を遊ぶ達人、金田さんの今連載はまさにこれからの豊かさのあり方について教えてくれているように思います。(by リノカジャーナル編集部)
ロングトリップで青森県へ
ずっと前から自分だけの秘密基地がほしかった。その中で過ごす時間を考えただけで幸せな気持ちになれる場所だ。そんなことを妄想しながら大人になって手に入れた秘密基地は、車中泊だった。
どこでも好きな場所へ行けて、いつでも好きな時に寝られる。
車中泊仕様のハイエースを手に入れた私は、車中泊という秘密基地だけでなく、旅に出られるという自由も同時に手に入れたのだ。
クルマで走れる場所ならすべてが遊び場になる。その距離が増えれば増えるほど、楽しみも増えてしまうのだから困ったものだ。
魅力溢れる日本の中でとくにお気に入りの場所は、青森県だ。関東から直線的に約700km。冬の東北旅の折り返し地点として、雪に埋もれた真っ白い青森は私の中で密かなブームなのだ。
ロードトリップの奥深さとは
初めて青森県の魅力に触れたのは3年前だった。自転車のルートガイドブックを制作するために青森県を隅々まで見て回った。四季にわたって景色を堪能し、地元の食を味わった。噛めば噛むほど味わい深く、知れば知るほどおもしろい。旅の奥深さを改めて知ることができた1年だった。それから、日本海と太平洋の両方を見ながら青森県を折り返し地点にした大ざっぱなルートが、私のフェイバリットロードトリップルートとなった。こんな適当なプランでも成立してしまうのが、車中泊ロードトリップの凄いところだ。
残雪のパウダーを求めて
ロードトリップの折り返し地点に相応しい語り切れない魅力をもつ冬の青森県では、世界レベルのパウダースノーを味わいたい。
そんな想いを気軽に叶えてくれる人たちが八甲田山にいる。中でも生っ粋の八甲田人、浜辺信彦氏のバックカントリーツアーは、雪を追いかける毎年のイベント的楽しみになっている。なによりも、生まれも育ちも八甲田山という浜辺氏のガイドの安定感が神業レベルなのだ。天候は多々あれ、その日の最高を心から楽しませてくれる。スキーに人生を捧げた彼の生き様に、男のフォースを感じるのは私だけだろうか。
どこにでも旅に出られる
晴天に無風が重なって、半袖でも暑いくらいの素晴らしい天気だ。THE DAYと言うものだろうかとニンマリする。そんな恵まれた天気の下でのランチは大いに盛り上がり、日焼け止めを再び塗りなおしてから、雪のテーブルを作り、パスタのための湯を沸かす。八甲田山の大自然を満喫し、薄着のままで樹林帯を滑り抜けた頃は、すでに西日を背中に感じる時間になっていた。
短いような長いような、とにかく濃密な時間であった。こんな日がいつまでも続いたら、と妄想してしまうシーンの連続だ。遊びを極めれば極めるほど広がるロードトリップの底力がここにあると実感した。
私がよく知る車中泊名人に3つの質問をしてみた。
源流の師匠 豊野則夫(70)
沢登り。アイスクライミング。アルパインクライミングを好み、山岳ガイド業を営む。著書に「源流のイワナ釣りガイド」「上信越の谷105ルート」「東北。上信越。日本アルプス。沢登り銘渓62選」等他多数がある。
1) 車中泊の魅力はなんですか?
何処でも(一応)寝られるのはいいですね。仲間との車中宴会も親近感が湧いて良いものです。ひとりの時は自らの人生を振り返る良い機会でもあります。テレビも無いし、基本ラジオも聴かないので、ひとりでチビチビ(でもないか)飲めるのが良いですね。
2) 車中泊を楽しむアイデアをおしえてください。
ホームセンターで調達できるもので改造していました。後部座席を畳んで寝られるスペースを効率よく作ります。斜度がある場所で滑らないように面ファスナーテープを張ったり、荷物の落下防止には網を使ったりしています。
3) これからどんな車中泊の旅をしたいと思いますか?
私の趣味は山や渓谷に入る事ですが、もう歳も70ですので厳しい山へ行くことも必然と減るでしょう。最近は、もう少し車中泊用にDIYを加えて海辺の旅に出てみたいと考えています。
山スキーの師匠 日置真之(46)
山の中に家を作ったり、MTBに乗ったり、雪山をスキーで滑ったりしている。
1) 車中泊の魅力はなんですか?
自由なところ。宿の布団がにがてです。
2) 車中泊を楽しむアイデアをおしえてください。
断熱すればするほど快適さは上がります。あと、電気毛布は冬の必需品です。
3) これからどんな車中泊の旅をしたいと思いますか?
北海道にあるいろいろなスキー場や山を巡りたいです。
アウトドアの大先輩 アドベンチャーレーサー 田中正人(52)
2002年にチーム・イーストウインド・プロダクションを設立。現在、海外のアドベンチャーレースに出場する一方で、国内レースの開催及び講習会など普及振興にも奮闘中。1993年第1回日本山岳耐久レースで優勝。数々の海外レースで実績を作り、国内第一人者となる。
1) 車中泊の魅力はなんですか?
どこでも泊まれるところですね。キャンプが許可されている場所以外でのテント泊は、はばかれますが、車内泊なら駐車場があればどこでも寝られる便利さがあります。長距離ドライブでの仮眠でも、横になって足が伸ばせると短時間でも疲れが取れます。
2) 車中泊を楽しむアイデアをおしえてください。
寝心地に大きく影響するので床がフラットになることがまず重要と思います。それと寝具(マット、寝袋、毛布など)の充実です。
3) これからどんな車中泊の旅をしたいと思いますか?
アドベンチャーレースのトレーニングがてら、日本中の山や海、湖、川などを巡ってみたいです。
妄想をして、旅に出よう
日本の四季は地球レベルで見ても素晴らしい変化を見せる類まれな奇跡の環境だ(と信じている)。圧倒的な雪の量で景色を一変する冬と、それがウソだったかのように皮膚を焦がす暑い夏の緑の濃さ。少しの遠出で非日常的なフィールドに溢れているのが日本のアウトドア環境なのだ。
週末の行き先がない?
それならば自宅から近くの国立公園をスマートフォンで調べてみればいい。選ぶ基準はシンプルにひとつだけだ。
「見てみたい景色」、それだけで行き先は決まる。
クルマは自分の機動力を高めてくれる道具だ。その道具に必要最小限の旅の道具を乗せる。旅のプランを想像する自分がいる。日本の国立公園にはその想像を超える絶景がある。
クルマは私が求めていた秘密基地の役割だ。
さぁ、また旅に出よう。
日本の国立公園 環境省
https://www.env.go.jp/park/
今回お世話になった人 ガイド八甲田山歩 浜辺信彦
問い合わせ n-hamabe@sea.plala.or.jp
アドバイス:厳冬期を中心に週末のスケジュールは事前確認が必須。毎年いくつかのメインルートを下から登ってその年の雪の感触を先に得ているとのこと。そんな積み重ねの努力をいつまでも惜しまない姿勢に感服。ガイドのカガミです。