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2020.2.12

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【Vol.8】雪化粧の磐梯朝日国立公園を遊ぶ雪中キャンプのすすめ【リノカで行こう】

2020.2.12

連載:Renoca Rent

寒そう〜! だけど、超綺麗!

今回は、冬ならではの楽しみが盛りだくさん。檜原湖(ひばらこ)でのワカサギ釣りや、雪の中でのキャンプの様子をお届け! 今年は暖冬と言われているように、例年凍るはずの檜原湖も、未だに凍っていない状況。。。それでも、雪は積もっています。真っ白な世界はとても綺麗ですね。写真を見ているだけでも寒さが伝わって来ます!
そして、もうひとつの連載、Renoca Adventureでお馴染みの、アドベンチャーレーサー田中陽希さんも登場! 冬のアウトドアでの服装について、教えていただきました! ただたくさん重ね着すれば暖かい、というわけではないみたいです! 寒冷地へお出かけ予定のある方は、参考にしてみてください!(by リノカジャーナル編集部)

「限られる」からこそスペシャルな冬のアウトドア

冬はやっぱりこたつとみかん! 温かいお部屋の中から窓の外の寒々しい冬を眺めながら、ときおり窓を開けて「うわ! 寒~い」なんて言いながら……もう最高。 おそらく世の中の大半の人たちはそんな冬ごもりが大好きなのではないだろうか? 正直、私もそんな人たちの中のひとりだと自覚している。
でもね。私はもう知ってしまったのだ。キーンと冷えた肌を刺す空気の季節の中でしか見ることができない、淀みのない透き通る世界を。遮るものがない美しい景色を。そして、限られた色彩、場所、人を。
日本には四季があり、そのどれもが美しい魅力を私たちに与えてくれる。「夏が好き」という人は、冬の厳しさを知っているからこそだし、冬を乗り越えた先に訪れる春の心地よさは、やはり冬があってからこそのものだと思う。
大体において「冬が大好きだ!」という人は、スキーヤーなどの冬のアクティビティにのめり込んでるマイノリティな人種。彼らが見出している喜びを同じように得るには、服装も装備もそれなりに準備が必要で、ラクに楽しめる要素は限られる。 でも、だからこそ逆に冬の魅力が大きくなるとは言えないだろうか?

「限られる」からこそスペシャルな冬のアウトドア

第一に冬のフィールドには人が少ない。ゲレンデのような冬のアクティビティで人を一カ所に集める場所は別にして、夏にはあれほどの人、人、人でごった返していた海や山が、冬場には貸切り状態になることさえある。自分の旅と空間を追求するリノカユーザーにとっては、これほど魅力的な季節はないと思う。
そんな独断と偏見を高く掲げて、冬の魅力を探しに磐梯朝日国立公園の檜原湖(ひばらこ)を目指してクルマを走らせた。

本当は凍るはずの冬の檜原湖をドライブ

今回紹介する檜原湖は、Vol.4で一度訪れている。その時は晩夏の季節だったので裏磐梯の沢登りと紅葉の色付き始めた森を紹介させていただいた。 その帰り道の檜原湖の近くにある森川荘の温泉に立ち寄った際に、「冬の檜原湖は氷上でワカサギ釣りができるんです」と言う情報を聞いていた。 「こんなにも大きな湖が凍る風景はぜひ見てみたい」と再訪を心に誓ったものだが、暖冬の影響でオープンが遅れているスキー場を横目に辿り着いた檜原湖は、やはり凍っていなかった。
それでも夏に見た景色は一変し、落葉で視界を広げながら雪化粧をまとった樹々と静かな湖面の薄いコントラストは、思わずクルマを停めてしまうほどの美しさがあった。まさに「優美」と言う表現がぴったりだ。
そして、肺に入る冷えた空気の強さを感じながら、「今この場所に来ることができて本当によかった」と本気で思える充実感に満たされた。
全面凍結した檜原湖の風景はどんなに美しいのだろうか? さっそく裏磐梯観光協会に問い合わせてみると「今年は遅いです。全面凍結はしない可能性もあります」とのことだった。観光協会のホームページの写真を見ると、私が見た風景とはまた違った趣で美しく、この場所ならではのスペシャル感が伝わってくる。

「限られる」からこそスペシャルな冬のアウトドア

写真提供:裏磐梯観光協会

山の幸、海の幸、食を現地調達するという究極の野遊び

風のない心地よい天気の下で、静かに浮かぶ湖面のワカサギ釣りイカダを眺めながらクルマを走らせていると、日陰になっている箇所では薄い結氷の棚を見ることができた。それはとても儚く、そして美しく、自然が創り出す造形の複雑さを感じさせるものだった。

今宵のスペシャルな幕営地を求めて

ちょっと予想外だった。湖畔沿いには数多くの素晴らしいキャンプ場があるのに、ほぼすべてのキャンプ場が冬季閉鎖だったのだ。事前の情報収集を怠ったことを悔やんでも仕方ないので、地図を見ながら気になる場所のキャンプ場へ片っ端から電話をするが、惨敗……。
そしてようやく見つけたのが、通年営業をやっている檜原湖オートキャンプ場。ワカサギ釣りも運営しているので、家族や友人で遊ぶなら間違いなくおすすめのキャンプ場になるだろう。

檜原湖オートキャンプ場

檜原湖オートキャンプ場

檜原湖オートキャンプ場

檜原湖オートキャンプ場

檜原湖オートキャンプ場

檜原湖オートキャンプ場

森川温泉にて、田中陽希と偶然の再会

とりあえず一カ所だけでもテントが張れる場所が見つかったことで気持ちが楽になり、夏にお邪魔した極上の源泉かけ流しが楽しめる森川荘に向かった。 ここの泉質はナトリウム硫酸塩泉の芒硝泉(ぼうしょうせん)に分類され、肌を刺激するピリピリ感と無色透明な美しいお湯が特徴。そして長湯しても汗をかきにくいという不思議な効果が楽しめる。
さらに偶然にも、NHK BS『グレートトラバース3』にチャレンジ中の田中陽希が泊っていた。そんなわけで、事務局の代表を務める私が装備の交換も兼ねて様子を見に行くことにしたのだ。 彼の旅と私の国立公園取材のタイミングにぴったり合うことなんて本当に珍しく、約1年ぶりの再会に話が尽きなかった。 良い機会なので、田中陽希の冬の服装技術についてご紹介したい。

アドベンチャーレーサー田中陽希の快適な冬の服装

こんにちは。アドベンチャーレーサーの田中陽希です。
今回は事務局のかねださんが磐梯朝日国立公園の取材で来られるということで、ついでに装備の交換をお願いしちゃいました。 森川荘の温泉がすばらしいという情報もかねださんから聞いていましたが、その時すでに森川荘に泊まっていました。いや~本当にそういう偶然もあるんですね(笑)。
陸上は徒歩で、海上はシーカヤックで移動しながら日本の3百名山を旅し、今ようやく250座を目前にしています。 今年は暖冬ということで山の雪も少ないのですが、それでも厳しい寒さの中でテントを張ることも多く、服装はとても気を使います。 今回はグレートトラバースの旅の中で使用している冬の服装技術についてご紹介します。

NHK BS『グレートトラバース3』にチャレンジ中の田中陽希

NHK BS『グレートトラバース3』にチャレンジ中の田中陽希

まず一番大切なことは、肌着です。上半身だけでなく、血液が冷えやすい下半身をしっかり守ることが重要です。
そして、運動中は当然ですが、暖房が効いた温かな部屋にいても汗はかきます。その汗が外の冷たい気温で冷やされると、どんなに厚着をしていても体の芯から寒くなります。体温を下げないためには、衣服内の温度差をなるべく少なくしながら、肌をドライな状態に保つことがとても重要なのです。
コットン素材は絶対にダメです。一度汗を吸って濡れてしまうとなかなか乾きません。 僕はポリプロピレンという水を吸わない繊維で出来た肌着を愛用しています。 次に、今度は汗を吸いやすい化繊素材のウエアを肌着の上に重ね着します。水を吸わないポリプロピレンの肌着はドライなままに、重ね着したこの化繊ウエアで汗を吸い上げて乾かすのです。これで汗をかいたとしても肌のドライ感を維持できるようになります。
保温力の調節には薄手の化繊ダウンを使っています。小さくなって軽くて温かいジップアップタイプがお気に入りです。暑くなったらすぐに脱ぐこともできますし、化繊わたなので濡れにも強いです。
そして一番上に防水ジャケットを着て風や雪を防ぎます。
これで大体の寒さは乗り越すことができますが、それでも寒さを感じた時には、ネックゲイターや帽子、手袋などで体温調節をこまめに行っています。この小物たちが実はとても大事だったりします。
できるだけ無駄な装備を持たずに、シンプルかつ効率的に保温し、自分の体温で快適な状況を維持するように心がけています。 寒いからと言って厚着ばかりしていると、汗をかいて結局寒くなったりしますので、みなさんも参考にしてみてください。

『グレートトラバース3』にチャレンジ中の田中陽希

『グレートトラバース3』にチャレンジ中の田中陽希

田中陽希と撮影クルー

田中陽希と撮影クルー

『グレートトラバース3』にチャレンジ中の田中陽希

『グレートトラバース3』にチャレンジ中の田中陽希

源泉かけ流し温泉宿の森川荘の船でワカサギ釣りのイカダに乗る

田中陽希がお世話になった森川荘は、ワカサギ釣りのイカダもやっているとのことだった。翌朝さっそくご主人にお願いし、ワカサギ釣りのイカダとはどんなものかを見せていただくことにした。
小さな船着き場から小さな船を出しながら、檜原湖の冬景色について教えていただいた。 「今年の檜原湖は氷が遅いですよ」と船を走らせながらご主人が話す。
「あそこに見える神社の鳥居の手前にはもうひとつ鳥居があって、水嵩が増す冬の間は水の中に沈むんです。そして湖が凍ると歩いて神社に行けるのですが、今年はだめみたいですね」 水の中に沈んでいる鳥居も神秘的だが、寒さの厳しい檜原湖に鎮座する神社の佇まいは、長い冬と共に寒さをも糧にして生きる人々の想いを感じさせる風景だった。

 船着き場:和風ペンション森川 ワカサギ釣り筏

船着き場:和風ペンション森川 ワカサギ釣り筏

和風ペンション森川 ご主人の小椋敏廣(おぐらとしひろ)さん

和風ペンション森川 ご主人の小椋敏廣(おぐらとしひろ)さん

桧原湖畔大山祇(おおやまづみ)神社

桧原湖畔大山祇(おおやまづみ)神社

家族で楽しめる温かいワカサギ釣り

和風ペンション森川 ワカサギ釣り筏船内

和風ペンション森川 ワカサギ釣り筏船内

湖が凍っても凍らなくても、ワカサギ釣り用のイカダは檜原湖に建つ。ただ、どこかで見たように思い描く、自分だけの小さなテントを氷上に建てて氷をグリグリして小さな竿から細い糸を垂らして……、という風物詩が今年は見えなかった。
それでもたくさんの人たちがイカダ小屋の中でワカサギ釣りを楽しんでいる姿は、冬ならではの心温まる姿だ。とくに子どもたちを連れての家族の姿は、こたつとみかんでは語れない家族愛に溢れているように思えた。
釣れたてのワカサギは銀色に輝き、その場に熱々の油でもあれば、釣れたてのワカサギを投入して素揚げで噛り付きたいくらいピチピチしていた。朝から昼過ぎまでのんびり釣りを楽しむ常連さんは、200匹以上釣り上げることもあるらしい。
ちなみにワカサギは、サケと同じく川と海を行き交う魚で、命の灯を産卵で終える一年魚だが、水温が低い場所では産卵後も生きることができるらしく、冬季結氷する檜原湖のワカサギの9割以上が二年魚になることが確認されている。
四方を山に囲まれた雪深い環境だからこそ育まれてきた豊かな漁場ということになるのだろう。

和風ペンション森川 ワカサギ釣り筏船内

和風ペンション森川 ワカサギ釣り筏船内

和風ペンション森川 ワカサギ釣り筏船内

和風ペンション森川 ワカサギ釣り筏船内

和風ペンション森川 ワカサギ釣り筏船内

和風ペンション森川 ワカサギ釣り筏船内

閉ざされた季節の不自由をスペシャルに楽しむロードトリップ

温かいお部屋の中から外に出るのは確かに勇気がいることだ。そんな想いを誰しもが持っているとしたら、それは逆に「誰もいないスペシャルな空間をひとり占めできるチャンスが来た!」と考えて真冬のロードトリップを楽しんでみてほしい。そして限られた空間の不自由さを思う存分に贅沢に楽しむのだ。
銀世界の中で得られた新たな価値観が、帰り路の心地よいBGMとなってこれから先の遊びに広がりを持たせてくれるはずだ。

NHK BS『グレートトラバース3』にチャレンジ中の田中陽希

和風ペンション森川 ご主人の小椋敏廣さん

今回お世話になった場所

桧原湖畔オートキャンプ場→ ウェブサイトはこちら
〒966-0401 福島県耶麻郡北塩原村大字桧原南黄連沢山1157-31
TEL.0241-33-2288
5スターの芒硝泉を誇る極上の温泉宿「和風ペンション森川」 →ご主人ブログはこちら
〒966-0501 福島県耶麻郡北塩原村桧原字早稲沢552
TEL.0241-34-2258

アドバイス:キャンプ場の運営状況は要確認! 天候悪化が予想される際には無理せず森川荘に泊まることをおすすめする。そしてスタッドレスタイヤは当然だが、万が一のためにチェーンの用意も忘れずに。

金田剛仁さん

著者:金田剛仁KANEDA KOJI

源流ライター。1976年7月生まれ、かに座、O型。
2004年のゲリラキャンプで山に目覚め、冬は山スキー、春は山菜、夏はイワナ、秋はきのこを追いかけながら、いつの間にか深山幽谷を旅する源流師となる。日本山岳ガイド協会所属。アウトドア中心の制作会社ハタケスタジオ代表取締役。前人未踏の人力チャレンジをサポートする人力チャレンジ応援部代表。