Renoca by FLEXRenoca by FLEX

2023.6.8

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【Vol.95】What’s Next?

2023.6.8

連載:Renoca Adventure

「選手としてレースしていた時には本当の意味で見えていなかった、やれているつもりでその違いをわかっていなかった。でも選手ではない立場で外からチームを見た時、初めてその事実を自覚した。さぁ、そんな私に次は何ができるだろうか?」 今回はそんなお話。

一石○鳥?

5月にTeam EAST WINDが出場したExpedition CANADAに、今回はメディアのアシスタントとして参加した。2023年のレースを計画した時点で、このカナダのレースには明日香さんが新メンバーとして参加することが決まっていたので、私はレースに大きく関わる予定は無かったのだが、個人的な理由で偶然同じ時期に偶然同じカナダに行くことになり、しかもレース開催地と私の滞在先が車で3~4時間程度の近さ!これは応援に行くしか無い!と盛り上がったのが今年初めのこと。 さらに、チームが目的としているアウトドアスポーツの普及、そのためのアドベンチャーレースのメディア発信のためには常に予算や人手が必要とされていることは知っていたので、ただの応援だけでなくボランティアとしてメディアを助け、それと同時に違う目線からレースを見ることでアドベンチャーレーサーとして何か学びを得ようと決めたのが春のことだった。(カナダでの楽しいバケーションをチームのために使うか、遊び暮らすか、最後まで悩んだのはナイショ…笑)

メディアチーム

外から見えたもの

TAの様子

慣れない大きな車で夜中にデコボコ林道を運転し、選手を追うカメラマン(ヨシさん)を山の中でピックアップし、余裕があればサブカメラで撮影し、隙きを見てレースの様子をSNSで発信する…選手ほどではないものの、メディアも昼夜を問わず動き続けるので決して楽ではない。しかし、やっぱりやって良かった。なぜなら、以前からヨシさんがチームにアドバイスしてくれていたことを、この目で確認することができたから。彼のアドバイス、それは「EAST WINDのトランジットが圧倒的に遅い」ということ。

実際に選手としてレースに参加している時は決してのんびりやっているつもりは無いのだが、確かに第三者の立場で見るとEAST WINDだけ他のトップチームより遅いように感じる。正確なタイムをまだ比較してはいないが、概算で30分程度は長くTA(トランジットエリア)に滞在している気がする。そしてこの30分が数日にもおよぶ長いレースでは数時間のタイム差になる。違いは何か?これはまだまだ考察の余地があるが、おそらくTAに対する考え方が原因かもしれない。他のトップチームはTAに着いた後も同じスピード感で動き続け、さっさと支度を済ませて次のセクションへ向かう。一方でEAST WINDはTAに着くと少し動きが鈍くなり一種の休憩モードのような状態になっているように見える。何十kmもの長いセクションを乗り越えた後に休憩するなというのも酷な話だし、TAはレース全体のごく一部でしか無いが、少なくとも目に見える違いがここにあった。

ウサギとカメ

では、EAST WINDはTAが遅いダメダメなチームなのか?そんなことはない。TAだって早くしようと心がければできなくはない。実際にニュージーランドのGODZoneではトレッキングからバイクへのトランジットを15分で済ませようと決めて達成できたし、今回のカナダでもTA1を目標の30分で出ていた。何より山の中での移動スピードはトップレベルだ。今回、レース後半にあったトレッキングセクションでは、トップ2チームが5時間半程度かかっていたのに対して、EAST WINDは体調不良のテツを休ませるために非効率なルート(雪の残る山頂を往復するルート)を選んだにも関わらず、6時間ちょっとでこのセクションを終えた。

笑顔で進むTEW

2022年のオレゴンのレースでも、TAでの睡眠が長いかわりに移動スピードが速いEAST WINDと、ほとんど寝ずにトップを守り続けるが移動スピードがなかなか上がらないスペインチームとの追いかけっこでドットウォッチャー(GPSトラッキングでドットを追いながら観戦する人)を盛り上がらせたのは記憶に新しい。つまり、童話の「ウサギとカメ」でいうところの、ウサギのような動きを見せるのがEAST WINDなのだ。

次の戦略

ライバルたちとの写真

童話のウサギ…というのはあくまでものの例えであって、レース中に油断して昼寝したことで優勝できなかったわけではないが、ウサギかカメかというのは戦略を考える上でわかりやすい。正確なナビゲーションとタフな体でチームを引っ張る陽希さんがいる場合は、たとえ休憩が長めでもウサギのような速さで進むことができるので、休憩を短くすることで優勝に近づく。では、キャプテン陽希さんや心強いパックホースのヨネがいない場合はどうなるのだろうか?

実はその機会が次のレースでやってくる。8月にフェロー諸島で行われるNIARに出場するメンバーは、正人、テツ、あーちゃん、ジョージの4人。経験豊富な正人がいるとはいえ、他の3人の馬力や能力を考えると、これまでEAST WINDが見せていたウサギのようなスピードは難しいだろう。となると必然的にカメのようなじわじわと進む戦い方が必要となる。これまでとは違う戦略…どうやったら…いや、でも他のチームにできて我々にできないはずがない!やってやろうじゃないか!そして、フェローでカメ戦略が成功した暁には、カメとウサギ両方の強みを持つ最強のチームの完成だ。なかなか優勝できないのは悔しいが、まだやれることがあるのは嬉しい。世界トップを目指して、まだまだ登っていくぞ!ウサギの脚力とカメの堅実さを武器に!

所 幸子さん

著者:ジョージ/所 幸子TOKORO SACHIKO

100マイルの何倍もある超長距離トレイルレースを得意とするランナー。国内外のトレイルレースに挑戦する傍ら、2016年頃からは国内アドベンチャーレースにも参戦し始める。2022年にはイーストウインドのメンバー(通称ジョージ)として自身初となる海外アドベンチャーレースExpedition Oregonに挑戦し、完走を果たす。