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2023.1.11

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【Vol.85】新しいチームの1年間を振り返って

2023.1.11

連載:Renoca Adventure

チームキャプテンを田中陽希に任せた

2022年1月にチームキャプテンを田中陽希に任せた。50半ばにもなる者がトップに居続ける組織に発展は望めないし、若手を育てるには思い切った変革が必要だ。 ということで、有望な陽希に安心して任せたが、彼にとっては苦悶と試行錯誤の連続だったようだ。キャプテンとは何か?その役目を果たせているのか?責任を人一倍に感じ、5月のオレゴン大会では自分が空回りしてチームを上手く回せず、プレッシャーに押しつぶされそうになっていた。決断する機会が増え、方針や意義を問われ、陽希の負担が大きくなってしまった。

長いミーティング

いっぱいいっぱいになった陽希だったが、彼の素晴らしいところは自分の現状を素直にメンバーに伝えて協力を仰いだことだ。頻繁にオンラインミーティングを開き、夜遅くまで議論することが増えた。メンバーは、チームに貢献するためにできる役割を積極的に担うようになった。一見頼りないキャプテンに見えたが、結果的にチームの結束とメンバーシップを引き出すことに成功した。議論をまとめる、課題を浮き彫りにし、タスクマネージメントをする、海外レース主催者とのやり取り、旅程計画と航空券やホテルの手配等々、チームメンバーがやるべきことは体力トレーニングだけではない。皆が協力し合うことでチームワークが高まっていった。

キャプテンとリーダーシップ

キャプテンとリーダーシップ

ある時のチームミーティングで、陽希が「皆がキャプテンであるべきだ」という発言がきっかけとなってキャプテンとリーダーの違いについて議論となった。私はキャプテンとリーダーを同じ意味と捉えていて今まで区別したことが無かった。キャプテンは船長であり、 チームの目標や方針を決定し、責任を持つことが求められるのではないか。リーダーは、その目標に向かってチームを牽引する役割であり、これは誰でも担うことができる。 キャプテンはチームを牽引するリーダーシップも求められるが、レース中にキャプテンが弱ったりすることもある。状況に応じて他のメンバーがチームを牽引するリーダーシップを発揮することはよくあることだ。

真のキャプテンに向かって

リーダーシップは皆で発揮することが理想だが、キャプテンは目的を示し、目標を定めてチームを統率する一人の役職であり、より客観的に状況を判断する力が求められる。自分の主観や感情で判断してしまうことと、客観的にものごとを判断することの区別をつけることは難しく、自分自身をコントロールする人間性も問われる。 厳しい自然環境の中で過酷な行動を強いられるアドベンチャーレースでは、メンバー間の分断化が起こりやすく、チームワークの真価が問われる。ひいては、各々の人間性が問われることになるのだが、キャプテンはその矢面に立たされやすい。

真のキャプテンに向かって]

世界に通用するチームを目指して

世界に通用するチームを目指して

お互いの信頼関係を築くには、他者を責めない責任感と受容力がメンバーにも求められる。 困難の多いアドベンチャーレースを上手く回すことと、世の中を上手く回すことは同義だと思う。メンバー各々が研鑽して成長していくことがチームの目的であり、それがレースも人生も勝利へと導く道であると思っている。その過程を赤裸々に表現していくことを2023年の目標としたい。

田中正人さん

著者:田中 正人TANAKA MASATO

1993年第1回日本山岳耐久レースで優勝し、それがイベントプロデューサーの目に留まり、レイドゴロワーズ・ボルネオ大会に間寛平チームとして出場。日本人初完走を果たす。 以降、8年間勤めた化学会社を辞め、プロアドベンチャーレーサーに転向。数々の海外レースで実績を作り、国内第一人者となる。
現在、海外レースに出場する一方で、国内イベントの企画、運営及び講習会や、若手育成、アウトドアスポーツの普及振興にも携わる。また、自身の経験を活かし「人間が学ぶものは全て自然の中にある」をテーマに全国で講演を展開する。