理想のチームメンバー
アドベンチャーレースは男女混成4人一組のチームレースだ。自分たちの意思で過酷極まりない未知なる世界へ挑む。
当然、どんなに事前の準備をしていても、予想外想定外のトラブルがレース中、チームに降りかかる。唐突もない時や不可抗力なことも、メンバーそれぞれの心身に蓄積されたことからも。ありとあらゆるものが原因となり引き起こされる。レース中のトラブルは日常茶飯事といってもいいだろう。時には、経験が乏しいメンバーがヒステリックを起こすこともある。動じない精神力を培うためには、レースに出続けることが最も不可欠だ。
レースで勝つためには、それらを上手くかわし、いなし、時には真正面から衝突してでも、乗り越えていかなくてはならない。
チームには「世界一になるという」目標がある。十数年のレース人生で、チームメンバーはコロコロと入れ替わっていった。
その度に、あと2年、3年でいい。このメンバーでチームを続けていられたら、「世界一」はそう遠くないと思った。しかし、現実はそう単純ではない。
どんなチームが強い?
そこで、これまでの経験から「こんなチームは強い」と思う職業やスポーツを考えてみた。
まず、職業で言えば、消防士、潜水士、自衛官、山岳救助隊、外資系企業のサラリーマン(語学力堪能であり、長期の休みがとりやすい)宇宙飛行士(個人的には一番興味がある)とまぁ、サラリーマンは別として、普段から身体を鍛えているであろう職業が多くなってしまうが、注目したのは、プレッシャーがかかる仕事の中で、日ごろからチームワークを発揮している点だ。
スポーツ競技で言えば、トライアスリート、マウンテンバイクライダー、アルパインクライマー、オリエンティア(オリエンテーリング競技)、パドラー(カヤック、カヌーなどのパドリングスポーツ)、トレイルランナー、スキーヤー(クロスカントリースキーやバイアスロンなどの距離スキー)などだろうか。どれも、基準となるのは長時間での連続運動が多い競技に集中する。だがそれ以上に注目したのは、道具を使うという点だ。体力だけで考えればマラソンランナーも含まれそうだが、トライアスリートのように水陸両用であり、バイクを乗りこなし、種目の多さも対応能力の高さを感じる。また、同じランナーでも、野山などの不整地を走るトレイルランナーの方が全身のパワーバランスがいいと思われる。それに、リスクへの回避能力も自然と培われていく。
それらを加味すると…「消防士もしくはアルパインクライマー(キャプテン)・オリエンティア・パドラー・トライアスリート(女性)」という感じだろう。アシスタントが必要なレースでは山岳救助隊と外資系サラリーマンが適任かと考える。
ちなみに漫画の世界だと…「孫悟空・孫悟飯・孫悟天・ブルマ」で文句なしだ。ただ、かなりの大食いなので、仙豆を大量に用意しておかなくていけないのが難点となりそうだ。
だが、なんだかんだ言って、極限の状況下ではそれぞれの肩書よりも、個々の人間性が問われ、互いに認め合い尊敬し協調性を抱けるかが、強いチームとなれるかの本当のカギを握るのだ。
アドベンチャーレース…現実的にいつまで続ける?続けたい?
あなたは今の舞台からいつ下りますか?もしくはいつまで続けたいですか?
アドベンチャーレースはワクワクする。ドキドキもする。そして、苦しく厳しい局面ばかりだが、知れば知るほどに面白い。と同時にとてつもなく恐怖も感じる。
生半可ではコテンパンに打ちのめされ、このレースの心髄にはたどり着くことはできない。だからこそ、全身全霊で挑むことが大切だ。
アドベンチャーレースに出会ったのが2006年。チームイーストウインドメンバーとして今年で13年目となる。年齢は38歳となった。
2007年トレーニング生として迎えられた時の当時のキャプテン田中正人さんと同じ年齢となった。
田中さんは現在54歳。今もアドベンチャーレーサーとして一線に立ち続けている。その姿を見ていると、「まだまだこれからだ!」と触発させてくれる。
今もこの先も、田中さんの存在がチーム、メンバーそれぞれにとって、必要不可欠だ。
数年前、田中さんは50歳を過ぎて、「60歳まで現役」を公言した。
一緒にレースに挑戦する中で、10年前と比べれば、正直体力の衰えは否めない。だが、それ以上に、以前よりも増す気力や活力には驚かされるばかりだ。時には、年齢のことなど忘れてしまうほど鬼気迫る瞬間も。レース中、チームでただひとり先頭に立ち発奮することもある。その度に、ただただ「すごい人だ」と尊敬の眼差しをおくる。
誰もが年齢とともに体力は低下していく、年齢を言い訳にするのは簡単だ。しかし、それが理由で挑戦できなくなるわけではない。
一度の人生、できることならばやりたいこと、なりたいものその全てを経験したいと考えることもある。しかし、体は一つ。一生かかって、やっと一つのことを極められるかどうかだ。
今はまだ道半ば。今はまだまだ「いつまで?」などとは考えなくてもいいだろう。一生懸命に、もがきあがき成長を繰り返すことに努めればいい。
生易しい世界ではないが、挑戦し続けることに価値があると信じ、続けられるだけ続けたいというのが本音だ。