新型コロナウイルスの影響
新型コロナウイルスの影響で我々の活動も翻弄されている。
まず、チーム・イーストウインドの生活拠点であるラフティングツアー会社カッパクラブが、営業自粛要請を受けて仕事ができなくなった。
そして、8月まで入っていた僕の仕事がすべてキャンセルになった。
さらに、今年の国際アドベンチャーレースの予定もすべてなくなった。
そんな状況の中、みなかみ町には第一次産業の働き口が多く、そのおかげでチームメンバーそれぞれが農業などのお手伝いをさせていただけることになった。前回ヒロシが紹介したこんにゃく芋畑もそのひとつだ。
ヒロシたちがこんにゃく農家で精を出している中、僕は自伐型林業に勤しんでいる。今は間伐した木を降ろすための作業道を整備中だ。
自伐型林業とは、現行林業が抱える採算性と環境保持を両立する持続的森林経営スタイルで、またの言い方を「長伐期択伐施業」と言う。一般的に40~50年のサイクルで伐採する樹木を、約2倍の樹齢まで伸ばす。全体の2割以下の間伐を繰り返す事で、残った木を成長させ、残存する森林の価値を高めるのだ。
簡単に言うと、よい木を残し、小さな木を伐採する考えで営む林業だ。闇雲に伐採するのではなく、遠い未来の森を見据えて作業する。いわば僕らは「150年先の森」を作っているのだ。
今を生きる我々ができることは?
みなかみ町の総面積で森林が占める割合は9割以上。僕たちは文字通り自然の中で生きている。森林と共に暮らしている者の使命として、価値のある森林を後世に残そうと努力している。
「後世のことを考えている」と言えば、今年から運用が開始される予定で建設が行われた北欧フィンランドの放射性廃棄物最終処分場オンカロを思い出す。原子力発電で発生する放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」を最終処分するために建設だ。
2020年から2120年までに使用した約100年間の放射性廃棄物を、地下約500メートルの施設に約10万年の間埋設する話で、この最終処分場を運営する会社の地質学者はこう言う。
「もちろん、私だって10万年後を100%予測することなんてできません。でも、将来のことは分からないので放っておけばいいというのも違うんじゃないでしょうか? 自分たちの国で出た核のごみは、自分たちの手で片付ける。道義的に考えればそれが一番理にかなっていると思います」と。
フィンランドが実施する放射性廃棄物最終処分場の賛否は、それぞれの立場で異なると思う。しかし、誰にも分らない未来のことまで考えて、今できることで実施に踏み切ったことは評価に値するはずだ。
日本でも同じく核のごみは行き場を失い、処理のなすりつけ合いが起きている。
なぜこうなってしまったのか?
後世のことは、その時に生きている人間が考えればいいのだろうか?
今を生きる我々ができることはなんだろうか?
森林に目を向けてみると、同じこと起きていた。
大木だろうが、小さな木だろうが、林業の経済のために皆伐する。
「また植林すればいい」、本当にそれでいいのだろうか?
自然と共に生きていくために
ちなみにアドベンチャーレースにおけるフィンランドは、地図読みが上手い選手が多い。特徴物のない森林でも、颯爽とクリアしていくフィンランドチームの姿は、自然と共に生きていることを表しているように見える。
自然を相手にするアドベンチャーレーサーとしてはもちろん、伐採者としても、そしてひとりの親としても、後世に残すべきものを正しく残し、今守るべきものをしっかりと考えていきたい。