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2020.1.14

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【Vol.16】自然災害とアウトドアスポーツを考える

2020.1.14

連載:Renoca Adventure

鋸山復興プロジェクト

2019年に見舞われた台風15号と19号の被害は甚大であった。予想を超える強風で屋根の河原が飛び、送電線は倒れ、大雨の被害で住宅地には水と土砂が流れ込んだ。テレビなどでは住宅地の被害ばかりを伝えているが、人里離れた山や川のダメージも多大であったことは言うまでもなく、我々アウトドアスポーツをやる人間にとっても、大きな爪痕として残った。
そんな中、台風15号の被害が大きかった千葉県房総半島では、観光地である鋸山の登山道を復旧させるプロジェクトが立ち上がっていた。山道を走ることを楽しむトレイルランナー達も多く集まり、道を塞ぐ倒木を切ったり、土砂を除いたりしてきた。

鋸山復興プロジェクト

復興による新たな可能性

復興による新たな可能性

それから、整備した登山道でトレイルランニングのレースが行われた。当日は好天に恵まれ、600名近い選手が汗を流した。 復活した鋸山山頂までの登山道は狭くて急登だが、この日を待ちわびていた一般登山者も多く訪れ、ランナー達と登山者で道を譲り合いながら道を一歩一歩踏みしめ、復興の感動を分かち合うことができた。
それでもまだ、道の脇の斜面には根を出した倒木が積み重なる痛々しさも残っている。逆に木が倒れた影響で道が明るくなり展望がよくなった場所もある。こうした自然の変化を目の当たりにしながら走っていると、復興によって生まれる新たな魅力の可能性も感じることができた。

復興による新たな可能性
復興による新たな可能性
復興による新たな可能性

復興途中の現状を知り、体験する大切さ

レースを終えた参加者から素晴らしいコースだったと喜びの言葉をいただき、それを聞いた地元の方々が喜ぶ。という正の連鎖が生まれた。登山道整備にボランティアで参加した人が選手としてレースに参加し、登山道を感慨深く走れたという貴重な声も聞かれた。
「被災地で遊ぶな」と思う人もいるかもしれない。でも、まだ復興途中の現状を多くの人に見てもらいたいし、その中で地域の魅力を体験してもらうことは、地元を勇気づけることになると実感した。

復興途中の現状を知り、体験する大切さ
復興途中の現状を知り、体験する大切さ
復興途中の現状を知り、体験する大切さ
復興途中の現状を知り、体験する大切さ

自然災害から学ぶ

自然災害から学ぶ

近年増え続ける自然災害によって、「自然を守る」「地域に貢献する」などの意識が芽生えることは素晴らしいことだと思う。自然は時に脅威を感じさせることがあるが、人が学びを得られる貴重な場所でもある。鋸山復興に携わったことで、より自然と接する機会を増やす活動を続けて行きたいと感じた一日となった。

田中正人さん

著者:田中 正人TANAKA MASATO

1993年第1回日本山岳耐久レースで優勝し、それがイベントプロデューサーの目に留まり、レイドゴロワーズ・ボルネオ大会に間寛平チームとして出場。日本人初完走を果たす。 以降、8年間勤めた化学会社を辞め、プロアドベンチャーレーサーに転向。数々の海外レースで実績を作り、国内第一人者となる。
現在、海外レースに出場する一方で、国内イベントの企画、運営及び講習会や、若手育成、アウトドアスポーツの普及振興にも携わる。また、自身の経験を活かし「人間が学ぶものは全て自然の中にある」をテーマに全国で講演を展開する。