今や世界のアドベンチャーレースはAdventure Racing World Series(ARWS)が主流となる。
このARWSは、ひと昔前の冒険旅さながらのアドベンチャーレースとは異なり、よりスピードや体力が求められる。
そのため冒険要素を求める我々とは方向性が異なる。
一方、ARWSに属さないPatagonian Expedition Raceは自然が深く、天候も厳しく、冒険要素がたっぷりで、スタートしたら数日間は人の姿を見ないという特異なレースである。しかし、昨今Patagonian Expedition Raceは開催されていない。
その代替として目指したのは、同じくARWSに属さず、また自然が深くて厳しいニュージーランドのGODZONEである。
ここに出場するのは昨年からキャプテンとなった田中陽希、前回のExpedition Guarani(パラグアイ)で初日から体調を崩して棄権した米元瑛、昨年からイーストウインドのメンバーとなった所幸子、そしてイーストウインド創設者である田中正人の4人。Expedition Oregonで準優勝したメンツだ。
そこにチームのサポートクルーとして現トレーニング生の小倉徹と、元イーストウインドのメンバーで現在は御嵩でSUPカンパニーを主宰する高畑将之の2人が同行する。
またチームイーストウインドの勇姿を幅広く伝えるため、昨年チーム専属メディアチームを結成した。
ここには同じく元イーストウインドのメンバーで現在フリーカメラマンの佐藤佳幸、アシスタントにNiseko Expedition運営の高山英恵が同行。
何日間も動き続け、疲労困憊し、エゴがむき出しになり、それでも信頼し、支え合い、一緒に歩き続けるチームの姿を映像に収め、時に速報として伝える。
リアルタイムにレースの展開が分かることで応援する側も一緒に戦っている意識が沸き、こちらもひとつのチームができてくる。
これは選手にとっても心強い限りだ。
今大会の注目点
レースの注目ポイントは、なんといっても各メンバーにおけるExpedition Oregonからの成長ぶりだろう。昨年からチームキャプテンを引き継いだ陽希。前回はキャプテンとしてチームをまとめる事、全員の意識を高める事、引っ張る事、時に頼る事の難しさに直面。今回「キャプテンとは何か?」を自身に問いかけるレースになるだろう。田中正人はチームキャプテンを退き、イチメンバーとしてレースに参加。年齢という壁はあるものの、まだキャプテンであることに不安な陽希を支え、育てていく必要がある。長年培ってきたレースへの感を手繰り、アドベンチャーレースとは何かをメンバーに伝える役目がある。紅一点の所は海外レースは2回目の出場となる。ウルトラランナーとして活躍する彼女だが、Expedition Oregonでチーム競技の難しさに直面。陽希とは大バトルを繰り広げた。しかし、そこから自分を見つめ直し、チームワークの大切さ、そしてそれを作るのも自分自身にあると実感したようだ。今回、それを体現化してくれることを期待している。そして米元瑛はパラグアイのレースではスタート1日目に体調を崩し、苦汁を飲んだ。一度は辞めることも考えたが、「ここには自分にできることがあるはず」と感じ、再びフィールドに立つことを決意。
私は、このGODZONEにおいて、米元に大きな鍵があると思っている。
今までは、チームで一番体力のある彼がチームを牽引しようとしていた。
しかし、それは物理的にメンバーを引っ張るだけで、心が付いてきていない事に気が付いたようだ。
今回は遅れをとったメンバーを引っ張るのではなく、寄り添う姿勢を取るとのこと。
折しも今回、正人が出国直前に急性腰痛症(ぎっくり腰)を患った。
時間の無い中、国内外で鍼治療やマッサージを受けるが、完治しないままのスタートとなった。いつも引っ張っていた正人を今度はメンバーたちが引っ張る側となる。
米元の姿勢に期待したい。
チームは4人。この中の1人の考え方が変わり、行動が変われば、全員が変わる。
全員が変われば、チームがまとまり、気持ちの良いレースができる。選手が気持ちのいいレースをすれば、見ている側にも気持ちの良さが伝わる。レースはスタートして25時間を越えた。これからが長い。
がんばれ、イーストウインド!