へっぽこゴリラのはじまり
ごく一部の誰かさんからシンデレラゴリラと呼ばれる私が友人たちと山で遊ぶ時、私の役割は専らナビゲーターで、地図を見ながら登山ルートをナビゲーションするのが大得意だった。私がナビゲーションに使うのはスマホの山地図アプリ。仕事柄、ITには強い方なので、アプリとGPSで現在地と進むべきルートを確認し、細かい分岐が続く道迷いエリアでも、先頭をぐんぐん進んで友人たちを目的地へ導く。 その私からスマホを取り上げるとどうなるか。現在地も進むべきルートも分からない。あさっての方向にぐんぐん進んで目的地からどんどん遠ざかるへっぽこゴリラの出来上がり。山と同じく圏外となったへっぽこゴリラは、狂ったナビゲーションをし続けることになる。
OMM山岳ナビゲーション 〜お荷物の状況を確認できません〜
私のナビゲーションデビュー戦は、1泊2日の山岳ナビゲーションレース「OMM(Original Mountain Marathon)」で、チームメンバーのてっちゃん(小倉徹)とペアで参加した。私たちのテーマは“とことん追い込む”。限界まで走って走って、ベストを尽くす方針で合意した。 レース1日目、テーマ通りスタートから追い込んで走るが、鈍足の私は限界まで走ってもてっちゃんの走行スピードについていけない。そこで、彼のザックと自分のザックの腰ベルトをロープで繋いで引っ張ってもらう牽引作戦に出る。見た目はまさに“飼育員に引きずられるゴリラ”で、そのゴリラに地図を見ながらナビゲーションする余裕は全くない。ゴリラが繋がれたロープの先では、とてつもないパワーの飼育員が的確なナビゲーションで1日目のゴール地点にゴリラを輸送する。
順調な滑り出しだったが、レース2日目、てっちゃんのナビゲーションに不具合が生じて道に迷ってしまう。彼と繋いだロープを頼りに、彼の走行スピードに必死についていく役目を全うしていたお荷物の私は、自分がどこに運ばれたのか全く分からない。Amazonに問い合わせても「お荷物の状況を確認できません」と回答が返ってくるに違いない。突如発生した輸送不具合に対応できないお荷物は何とかゴール地点へ届けられたが、レース結果は道迷いによるタイムオーバーで、失格だった。 私たちはとことん追い込む方針で、間違った道を進み続けてしまっていた。安全運転をしていれば気付くはずの間違いに気付けなかったことが明暗を分けた。ナビゲーションが疎かになるような走行スピードは、スピード違反。ゴリラはスピード違反の危険性について学んだ。
MTB山岳ナビゲーション 〜のちほどサーカスの舞台で〜
OMMの余韻冷めやらぬ中、1人でナビゲーションを行う機会がやってきた。しかもMTBの山岳ナビゲーションだ。MTBは今年5月に中古MTBを購入したばかりで初心者マークが付いている状態だし、ナビゲーションはまだまだ未熟。それなのに、いつもの必殺技“勢いだけ”で、山をMTBで走りながらナビゲーションを行うイベントに参加してしまった。一輪車もジャグリングも上達していないゴリラは、一輪車に乗りながらジャグリングするサーカスに出られるわけがないのに。 そんな心配は的中し、ゴリラのサーカスはボロボロだった。MTBの走行スピードにナビゲーションが追いつかず、分岐という分岐を漏れなく華麗にスルーする。しかも1人でサーカスを開催しているので、大惨事になっても止めてくれる団長や観客はいない。サーカス場外まで暴走していたことに後から気付き、1人で反省して1人でとぼとぼ舞台へ引き返す。 ゴリラの暴走は全て、ナビゲーションを疎かにしてMTBで“スピード出し過ぎ”たことが原因だった。OMMの特大ブーメランだ。偉そうに「安全運転をしていれば〜」などと語っていた前述の自分をこの場に召喚して、3時間説教させたい。そして、OMMでスピード違反だと思っていたてっちゃんに全力で土下座して謝りたい。
進化に必要な2通りの方法
いずれの山岳ナビゲーションも結果はダメダメのメタメタだったが、そのかわりに大きな成果を得ることができた。
「これは失敗ではなく、うまくいかない方法を2通り発見しただけ」だということ。かの有名なトーマス・エジソンの受け売りだけど。
エジソンは「成功の反対は失敗ではなく、挑戦しないことだ」とも言っていた。
実際その通りで、これまで山地図アプリとGPS頼りだったへっぽこゴリラは、紙地図とコンパス頼りの山岳ナビゲーションに挑戦したことで、多くの経験値をゲットして大きなレベル上げに成功、エリートへっぽこゴリラに進化した。
座学より演習、習うより慣れろだ!ナビゲーションは会議室で起きてるんじゃない!現場(山)で起きてるんだ!!
エジソンは言う。「失敗すればするほど、我々は成功に近づいている」と。
さあ、次はうまくいかない3通り目の方法を発見しに行こうか。