Renoca by FLEXRenoca by FLEX

2022.12.7

%e2%91%a0%e5%af%8c%e5%a3%ab%e5%b1%b1

【Vol.83】あなたにしかできない戦い方

2022.12.7

連載:Renoca Adventure

女性として

「レース中に女性として意識していることはありますか?」
アドベンチャーレースを嗜む女性がよく聞かれる質問だ。 気になるのも無理はない。男性に混じって過酷なレースに挑むのだ。肉体的に男性より不利な女性がどうやってチーム内で立ち振る舞うのか、そこに男女で何かしらの差がありそうに思える。 結論から申し上げると、「私としての役割」は意識してきたが「女性としての役割」はあまり意識してこなかった。肉体的・技術的な差は気になっても、単純な性差はレースにおいて重要ではないのだ。

女性としての私

NZトレッキング

ただ、よく考えると、私が自分にできること(役割)として意識している部分には、女性ならではの強みも混じっているな、と感じることがある。 例えば、私は短距離を速く走ったり、重たい荷物をたくさん持つことは苦手だが、そこそこの荷物を持ってゆっくり何日間も潰れずに動き続けることは得意だ。 だから、レース中の大半は男性より少なめの荷物を持ち、無理のないペースをキープするが、ここぞという時(例えば男性メンバーが眠気や疲労で動けなくなってしまった時など)は、私が荷物を持ったり、リードしたりする。そのようにして私が引っ張ることのできる距離は決して長く無いが、その間に男性メンバーが回復してくれればそれで良いのだ。 いわば、車に積んでいる予備タイヤのようなものだろうか。普段はお荷物だし、ちゃんとしたタイヤに比べれば走行性能も劣るが、これのおかげで標準のタイヤがパンクした場合でも、きちんと目的地に到着することができる。レースにおいても、メンバーの誰かが潰れてもチームとして動き続けられることが大事なのだ。

そして、私の強みである「潰れずに動き続けること」というのは、男性に比べて女性の方が得意なように思う。(トコロ調べ) 実際にウルトラマラソンでは、よく鍛えた体を持っていて私より速く走れる男性が、後半になっていきなり失速したりリタイヤすることが少なくない。逆に女性は無理せず自分のペースで進むので、後半になっても脚を残していてガンガン抜かしてくる。 パフォーマンスの上がり下がりが少なく、安定して細く長く生き残ることができるのは、女性に多い特性であり強みのひとつだろう。

◯◯としてのあなた

ここまで、女性目線の話をしてきたが、これは女性やアドベンチャーに限った話ではない。 かの有名な孫子の言葉にもあるように、どんな時でも誰にとっても『彼を知りて己を知れば、百戦殆うからず』なのだ。自分の強みや特性を知り、きちんと周りを把握した上で挑めば、一見不利に見える状況でも勝つことができる。 そしてここで大事なのは、「◯◯としてのあなた」の◯◯に入れる言葉だ。 例えば、長距離選手が短距離走で短距離選手に勝つ必要はない。「長距離選手としてのあなた」が長距離走という主戦場で勝てば良いのだ。 あなたが不得意とするジャンルで負けたからといって、あなたの全てが否定されたわけではない。
あなたの強みは何だろうか
あなたの主戦場はどこだろうか
あなたが本当に勝ちたい場所において、あなたが得意としていることを活かして、あなたにしかできない戦い方で勝ちにいってほしい。

NZ ばんざーい
所 幸子さん

著者:ジョージ/所 幸子TOKORO SACHIKO

100マイルの何倍もある超長距離トレイルレースを得意とするランナー。国内外のトレイルレースに挑戦する傍ら、2016年頃からは国内アドベンチャーレースにも参戦し始める。2022年にはイーストウインドのメンバー(通称ジョージ)として自身初となる海外アドベンチャーレースExpedition Oregonに挑戦し、完走を果たす。