新Team EAST WIND
さて、今まさにアメリカ・オレゴン州で死闘を繰り返しているEAST WIND。
今回のメンバーは最高の精鋭と言っても過言ではない。
まず今年からキャプテンを伝承した田中陽希(通称よーき)。
海外レースは実に5年ぶりになる。新キャプテンとしてレース前から気合が入っている。
だが、その生真面目さからチームを引っ張らないといけない!という責務に圧され、これが返って仇になることも。
グレートトラバースでは個人で動いていたが、今回はチーム行動である。思う通りにはいかない事も多々出てくる。
個性強いメンバーたちをどうまとめていくか。ここが彼の課題になるだろう。
次に所幸子(通称ジョージ)。
前回書いたように彼女は超長距離を得意とするランナーだ。
そもそもドイツで開催される1000㎞を2週間で走破するレースに目標を定めてトレーニングしていたのだが、コロナ禍でレースが延期。そこに正人が声を掛けたという経緯がある。
ここまでの準備段階で彼女と会話を重ねてきて感じたのは、彼女がとてもオトナであり、精神的にも落ち着いている、ということ。
明るい性格で、チームに対する貢献度も高い。しかし、本格的な海外レースは初めてだし、ウォーター物もロープ物も慣れていない。
なによりチーム戦である分、個人の自由が利かない。しかも紅一点は良くも悪くもチームの雰囲気に大きく影響する。彼女のオトナ的思考がどこまでもつか。
そして米元暎(通称ヨネ)。
実は今回、私は一番の見どころは彼にあると思っている。
ここまでヨネは強い選手にありがちな行動をとってきた。
それは正人も以前は頻繁にやっていた事だが、レースが進むにつれ精神的に追い込まれると、つい遅い選手に苛立ち、機嫌が悪くなり(無口になる)、自分だけさっさと行ってしまうという行動。
誰よりもトレーニングをしている彼にとって「チームを引っ張らなければ」という気持ちがあるのだろうが、遅い選手とはどんどん差ができてしまうだけで、引っ張られているどころか、むしろ怒っているのかとも思われていた。
普段の彼はとても優しい。他人を思いやる心をしっかり持っている。
しかし不眠不休のアドベンチャーレースは、そんな優しさをも疲労困憊に陥れる。
アドベンチャーレースは人を成長させる要素が豊富に詰まっている。
フィジーで味わった悔しさを思い出し、今回はチームの機動力として遅くなった選手の底上げを図ってほしい。
で、田中正人(通称鬼軍曹)。
体力的にかなり響く年齢になった。
それでもこの地に立つ意義として、今までの経験と知恵が必要とされているからだろう。
キャプテンをヨーキに、機動力をヨネに託したのなら、自分がやるべきこと、チームでの立ち位置、自らの課題は見えているはず。
今まではリーダーとして引っ張ってきたが、今回からはメンバーを、特によーきをしっかり支える後見役になるはずだ。
それは「新しい風を東から迎え入れる」ということ。
経験があるからと言って、風の入れ方を「今までこうしていた」などと古い価値観を持って指示していては、ずっと古いやり方に固執してしまう。
もちろん必要に応じて助言はするが、新しい風は新しいやり方で、デジタル時代はデジタル方式で取り入れるべきなのだ。
さて、私。
ここまでの準備を手伝ってきて、心がけてきたことがひとつある。
それは『決して老害にならないこと』。
レースの準備から片付けまで、いろいろと世話焼き担当でもあるが、母のごとく厳しくも甘えさせもせず、しかしながら抑えるところはしっかりと抑え、支えるべき箇所は縁の下に潜んで持ち上げていきたいと思う。
いうなれば、ぽたぽた焼きのパッケージにある“おばあちゃんの無駄知恵袋”的立ち位置で、今回のレースを楽しみたい。
レースは後半に突入した。
今大会は主催者も予測していなかった悪天候で、雪・雪・雪に阻まれている。
現在イーストウインドは2位をキープしている。
ここに来てチームワークがぐんと良くなったと聞く。
あと一息だ!
がんばれ、イーストウインド!!!