好きなことをやり続ける意義
今年の1月からチームイーストウインドのチームキャプテンを田中陽希に任せることにした。
アドベンチャーレースを始めて28年間。ずっとチームキャプテンという立場で走ってきた。長く続けることが凄いと人からは言われるが、あっという間に年数だけが過ぎてしまったようで、焦りさえ感じる。
ただただ好きなことにひたむきに取り組み、多くの人を巻き込み、たくさんの応援を受けながらレース活動を続けてきた。
世界大会での優勝という目標は未だに達成できず、月日の流れの速さに自分の今までの人生の意義を考えさせられる。
その月日の中で、田中陽希がアドベンチャーレーサーとして成長してくれたことは、私の大きな喜びであり、人生の集大成と大げさに位置付けても良いのではないかと勝手に安堵している。
アドベンチャーレースをやり始めた当初からありきたりに世界一を目指してきた。
ただ、マイナースポーツゆえに優勝したとしても何かが変わるわけではない、ということはとうの昔に認識している。
世界一を目指す理由は、それだけの覚悟と熱意を持ってやり抜くため、そして全力で挑まなければ何をやっても得るものがないと本気で思えたからだ。
人生を賭けて真剣にとことんやるからこそ、逃げ場がなくなり、言い訳ができなくなる。必然的に向き合うべき課題に対峙し、乗り越えていかなければならなくなる。
高いレベルを目指すほどに多くの困難が生じるが、チームメンバーと力を合わせて解決していくのがアドベンチャーレースの醍醐味だ。
自分の選択で人生は変わっていく
田中陽希には、初期のトレーニング生の時代から「次期キャプテンはおまえだ!」と言い続けてきた。
田中陽希が現れるまでそんなことを言ったチームメンバーはいなかった。チームイーストウインドは田中正人のチームという意識が強かったと思う。チームメンバーがどんなに頑張っても、所詮は田中正人のチームであることに変わりはないという意識が強かったのだ。
しかし、田中陽希は違っていた。
彼はすべてを自分事として捉え、トレーニング生の頃からイーストウインドは自分のチームであるという意識が強かった。
すべてが自分事だから、すべてにおいて自分で考えて、能動的にそして自発的に動いていた。自分で考えて自分で判断していたから、物事の飲み込みも早かった。
物事をどう捉えるかで人生の行方は変わっていくのだと思った。
人生は常に選択の連続だ。
その選択には自分の価値観や感情などが影響するが、無意識でも選択を続けていると思う。
自分が思い描く人生を歩めているか?
行きたい方向に向かえているか?
それは生まれた境遇や運命などではなく、意識的にも無意識的にも自分の選択の結果なのである、ということが田中陽希を見ていて強く感じたのだ。
だからこそ、チームイーストウインドのチームキャプテンを田中陽希に任せることができた。