Renoca by FLEXRenoca by FLEX

2021.12.22

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【Vol.59】トンビがトンビを産むとは限らない

2021.12.22

連載:Renoca Adventure

お父さんは他人?

県立中高一貫校に通う娘は、毎朝6時過ぎに家を出て、夜8時近くに帰宅する。通学時間は車(駅まで送迎)、電車、自転車を乗り合わせ1時間30分程度かかる。それでもまったく苦にならず、むしろ通学時間に宿題をやったり、当日のテスト勉強をしたりと、彼女なりに有意義に過ごしているようだ。

そんな娘も、学校では父親の仕事を頑として言わない。
どうやら小学校の時、テレビで放送された内容が、あたかも父親がパワハラではないかと見せる箇所があり、同級生から「お前の父ちゃん、パワハラ」だの「暴力リーダー」だのとからかわれたのが嫌な思い出として残っているのだ。

また、父親がアスリートであるため、運動音痴の娘は「どうしてお父さんは運動できるのに、あなたはできないの?」と幼少期から言われ続けている。

現在の中学は遠方にあり、誰も父親のことを知らないため、最初は安心をしていたが、それでも放送を見て気が付いた友人や先生がいた。
「昨日、テレビに出てた?」と聞かれるや否や「出てません」と即答。名前まで出ちゃってるのに、とことん白を切るなんぞ、なんだか健気だ。

イメージが先行してしまい・・・

ある冬の日。みなかみ町は災害級の大雪となった。当然電車も停まり、復旧目途が付かず。それでもどうしても学校に行きたい娘は、父親に懇願して、学校まで車で送迎してもらうことになった。災害級の天候でも行きたいくらい学校が好きなのだ。
学校に着いたら、級友も先生も「よく来れたね!」と驚いていたそうだ。
そして次の一言に娘は大きな衝撃を受けた。
「お父さんに叱られて連れてこられたの?」

この場をお借りして言わせていただきたい。
夫(田中正人)は家族に対して手を挙げたり声を荒げたりしたことは一切ない。モラハラ、パワハラも一切ない。
むしろ家事や子育ても進んでやるし、どんなに疲れていても嫌な顔ひとつせずに娘に付き合うし、私の身体も気遣ってくれる、世界一優しい父親であり、夫である。

私たち夫婦は、娘に「これはダメだ」「これをしなさい」などとは一切言わず、娘が自ら考えて、それが正しいと判断し、やりたいと思えば、それを補佐していく。
大雪の日でも「学校に行きたい、学校にいくべきだ」と判断したのなら、私たちは送ってやるだけのことなのだ。

一方、アドベンチャーレースは命が掛かっている。だから一瞬のミスも命取りになることもある。ゆえに危機管理を怠らないためにも、特にスキルのない選手には厳しく取り組む。パワハラと言われてしまう所以はそこにある。

それぞれの道を歩けばいい

子どもは親の所有物ではない。親の思う通りに育つ訳がない。
アスリートの子どもが運動音痴だっていい。学者の子どもが勉強嫌いだっていい。
あなたは親の持っている素質をすべて受け継いだか?
あなたの子どもはあなたの持っている能力をすべて受け継いだか?
逆にあなたの持っていない能力を子どもが持っていたらどうなのか?
子どもは一人の確立した人間である。親にない能力を持っていることだって十分にある。

子どもたちよ!
周囲が敷いた道を歩く必要はない。もちろん、たまたま親のやっている事をやりたいなら、その道を進めばいい。
どんな事であれ、自分で決めたなら、その道を一所懸命に進みなさい。
悩んだり、不安になることもあるけれど、まじめにやっていれば、必ず誰かが手を差し伸べてくれるから。

竹内 靖恵さん

著者:竹内 靖恵(すーさん)YASUE TAKEUCHI

元某上場企業の翻訳・通訳。その語学力を生かし、1997年レイドゴロワーズ・南アフリカ大会でTeam EAST WINDのアシスタントを務める。1998年アラブ首長国連邦で就労。帰国後、Team EAST WINDのプロデュース及び海外レースの翻訳・通訳・交渉、国内のアドベンチャーレースの事務局を担当する。田中正人の妻であり一児の母。