2024年10月1日から、車検の項目に「OBD検査」が加わります。昨年10月からプレテストによる運用が開始されていましたが、ついに本格運用が開始され、対象車両の車検にはOBD検査が必須となります。今回はあまり耳馴染みのないOBD検査や、そもそもOBDという機能について解説していきます。
そもそもOBDとは?
車でよく耳にするOBDとはいったい何でしょうか?
OBDとは、On-Board Diagnosticsの略で、車載型故障診断装置のことを指します。現代の一般的な車に標準搭載されており、専用の機器を接続すると車両のさまざまな場所で生じている故障や不具合の有無などを調べることができます。
コンピューターなしで車は動かない
車はさまざまな部分で電気的な制御が行われています。
キーを開ける。
エンジンを始動する。
トランスミッションを変速する。
ブレーキを掛ける。
このような基本的な車の動きにも電子制御が入っています。
また、近年では自動ブレーキをはじめとする運転支援システムの標準装備化が進んでいますが、当然この手の機能も同様にコンピューターを介して制御が行われます。車を動かすために、各部の状況を判断して最適な状態にするという作業が、ドライバーの操作の裏側で常に行われており、現代の車はコンピューターなしでは動かすことができないというわけです。
日本でOBD2の装着が義務化されたのは2009年から
故障や不具合を検出した場合、その情報はOBDに情報が記録されます。以前は、自動車メーカーごとに独自のシステムを構築して故障診断を行っていましたが、通信規格がバラバラだったので自動車ディーラーだけでなく、民間の修理工場もツールを揃えるのが大変でした。そこでアメリカの自動車技術者協会SAEにより、診断コネクターと診断コードの標準化が促され、1991年にOBD1が誕生しています。
その後、各自動車メーカー共通の接続コネクターと故障コードを統一したOBD2が登場し、1996年にアメリカで義務化、日本は2009年10月1日以降の新型車から義務化されています。
車検に導入されるOBD検査とは?
2024年10月1日より車検時の項目として追加されるOBD検査1とはどのようなものでしょうか?
OBD検査とは?
OBD検査とは、車検時に車両の故障や不具合をOBDを使って診断して、問題がないかどうかを確認するものです。
自動ブレーキや車線維持機能といった自動運転と安全運転支援の機能が装備されてきていますが、複雑で高度な電子制御とデバイスによって構成されているため、万一故障してしまった場合には、機能が正常に動作しないだけでなく、重大な事故に繋がることにもなりかねません。
そこで、従来の車検では確認できなかった電子制御装置などを、このOBD検査によって確認することで、安全な走行ができるかを判別することになりました。
OBD検査の対象車両は?
OBD検査の対象となる車両は、車検証の備考欄に「OBD検査対象」と記載されているので、ご自身のお車の車検証を確認してみましょう。具体的には、国産車は2021年10月1日以降に発売された新型車(フルモデルチェンジした車)、輸入車は2010年10月1日以降がそれぞれ対象です。
なお、車検証にOBD検査対象と記載されていても、型式指定の日から2年かつ初回登録から10ヶ月が経過するまでの間は、OBD検査の対象となりません。
OBD検査で変わることは?
いよいよ車検時にOBD検査がスタートしますが、車検を受ける側のユーザーはなにか変化があるでしょうか?
OBD検査の流れは?
対象となる車両にお乗りの場合でも、オーナー側は今までどおり必要な書類を揃えて車検を受ければOKです。OBD検査を実施する車検では、車検を行う検査員や検査官の作業に変化があります。
とはいっても、車両に診断装置を接続し、インターネットの環境下で診断装置と自動車技術総合機構のサーバーを接続すれば、あとはアプリケーションが起動して車両側に記録されていたDTCを自動的に読み込み、その結果合格か不合格化を表示するという流れなので、手順としては煩雑なことはありません。
ただ、通信環境が不安定な状態でサーバーと情報のやり取りをおこなった結果、特定DCTが記録されていない状態でも通信エラーで不合格になるという可能性があるようで、改善すべき課題が残っているとも言えます。
特定DCT
OBD2が診断した結果、不具合・故障が発生していると判断した場合に、ECUに保存される英数字からなるコードをDCT(Diagnostic Trouble Code)と呼びます。このDCTの中から、車検において不合格とされるコードを特定DCT2として定めています。特定DCTは主に保安基準に関するもので、該当するDCTが1つでも検出されると、走行に問題があると判断されて車検を受けることができません。
なお、この特定DCTに該当しないDCTが検出された場合は、車検不合格とはなりません。
OBD検査のメリットは?
ユーザー側からすると、従来の車検で行われる物理的なチェックに加えて、OBD検査によって電子的なチェックも行われるため、安心度が増すといえるでしょう。特定DTCが検出されなければ、(電子的には)保安基準に適合しているということになります。
また、故障診断によるスキャンは細分化されているため、特定DTCにより「どこがどのように問題がある」かを詳細に把握することができ、不具合の特定から修理までの時間を短縮することができます。
さらに、現在は警告ランプが点灯していると車検不合格となりますが、警告ランプ自体が不具合を起こしていて、実際は機能自体は問題がないというケースもあります。その場合、特定DTCにはエラーコードが記録されないため、原因の特定が簡単になる可能性が上がります。
またその逆もしかりで、警告ランプは点灯していないけれども故障があるというケースです。排出ガス対策装置関連で故障を2回検知すると、レディネス・コードというコードが自動記録されます。警告ランプが点灯しない異常を見つけることができるというのは、ODB検査の大きなメリットと言えるでしょう。
車検はゆとりをもって準備しましょう
OBD2による診断は専用のツールが必要です。個人でネット通販で診断ツールを購入し、故障診断することはできます。しかし、エラーが出たとしても修理できないケースもあり、専門店などに入庫する必要があります。
車検の期日が迫っている状況でエラーの修理が必要になると大変です。車検切れということも考えられます。そうならないためにも、車検期間間際ではなく、余裕のあるタイミングで継続車検を受けることをオススメします。車検に関するご相談は、お近くのフレックスのお店までご連絡ください。