トヨタUSAがSEMAショー2023に展示したのは、ランクル45をベースに超絶マッチョに仕立てた「FJ Bruiser(FJブルーザー)」1。懐かしのランクルが最新のオフロードテクノロジーでモンスターマシンとして現代に蘇りました!
FJ45を最強のロッククローラーに仕立てる
日本でも正式発売が待ち遠しいランクル250ですが、アメリカでも色々なイベントでプレビューが行われ、大きな注目を浴びています。先日行われたSEMAショー2023の会場では、トヨタUSAがFJ45ランドクルーザー・ピックアップトラックをベースにしたワンオフモデル、FJブルーザーを発表し、喝采を浴びました。
ロッククローラーとは?
こんなところを車で走れるの? と怯んでしまいそうな厳しい地形を走破するのがロッククローリングというエクストリームスポーツです。サスペンションのストロークを大きくしたり、低速でしっかりと地面をグリップできるようなタイヤを履くなど、荒れ地の走破性能を高めるカスタムを施した4WD車を巧みに操って、激しい岩場や崖をクリアしていきます。趣味として楽しんでいるというだけでなく、競技として世界選手権2も行われています。
57年前のFJ45ランドクルーザーを全バラ
ベースとなったFJ45は1966年式、57年前に製造されたピックアップトラックです。オリジナルのシャシーは流用せず、すべてパイプフレームに置き換わっています。フルパイプフレームに剛性を上げるロールケージを組み、その上からFJ45の皮を被せるような方法です。腐り切っていたラゲッジやリアゲートも美しく作り直されています。
エンジンはTRD謹製のナスカーV8
Retro Cruiserの記事でも書きましたが、アメリカ人という人種は本当にV8エンジンが大好きです。チューニング=大排気量V8エンジンスワップが常套手段なので、このFJブルーザーでも心臓にはV8エンジンが選ばれています。
しかもただのV8ではなく、アメリカの人気レースシリーズ「NASCAR」に参戦しているカムリに搭載されるTRD(Toyota Racing Development)製のV8エンジンです。排気量は358cu.in.(5,867cc)ですが、NASCARのレギュレーションには縛られないのでさらにチューニングを施したことで、最高出力はなんと725hp!
ボンネットにはホットロッド風のインテークがどーんと突き出し、MagnaFlow(マグナフロー)社製のエキゾーストシステムと組み合わせることで、迫力のあるサウンドを実現しています。
最新のオフロード技術を投入
ロッククローラーは、路面とは呼べないような激しい起伏の地形に対して、いかにタイヤを接地させて車を進めるかがポイントです。そこでFJブルーザーには、最高のオフロードパーツと最新の技術が投入されました。
トランスミッションはRancho Drivetrain Engineering(ランチョ・ドライブトレイン・エンジニアリング)社製のレース用3速オートマチックトランスミッションで、前後のCurrie(カーリー)社製ディファレンシャルとAdvance Adapter (アドバンス・アダプター)社製のアトラストランスファーケースを介して4輪を駆動しています。
これらのパーツを適切に制御することで、もっとも低いギアを選択したときは時速12マイル(約19km/h)、もっとも高いギアを選択した時には時速165マイル(約266km/h)での走行を可能にしています。
驚異的なサスペンションストローク
マッチョな足元も特徴的です。ホイールは20インチのMethod(メソッド)社製のビードロックに、42インチのBFグッドリッジのクローラーT/A KX タイヤを組み合わせています。
ロッククローリングで必要なのは、ホイールのトラベル量、つまりどれだけタイヤを上下させられるかです。そこでFJブルーザーでは、Fox社製のショックアブソーバーと、Eibach(アイバッハ)社製のスプリングをそれぞれチョイスし、フルトレーリングアームに装着しています。驚異的なストローク量を実現した足回りは、フルバンプ時にはタイヤの頂点がフロントウインドウの半ばまで来るとか。
腹下には戦車のようなキャタピラーも装備!
オフロードマシンは岩や突起物から腹下を保護するためにスキッドプレートと呼ばれる板を取り付けます。しかしFJブルーザーでは、スキッドプレートの代わりになんとキャタピラー(CAMSO社製)が取り付けられているのです。ワンオフで製作されたサスペンションは尋常ではないストローク量を確保していますが、それでも4輪ともに接地できずに、いわゆる亀のような状態に陥ってしまったときに、このキャタピラーで脱出するというのです。なんともユニークな機構ですね。
インテリアも手抜かりなし
FJブルーザーのインテリアもかなりのインパクトです。ステアリングは、往年のレーシングドライバー、ジャッキー・スチュワート氏が1968年のニュルブルクリンクF1で勝利したときと同じモデルを装着。シートはMOMO社製のフルバケットシート、デイトナEVOですが、その表皮は印象的なブラックウォッチタータンへと張り替えられています。ロールケージにも巻かれているタータンチェックは英国繋がりということでしょうか。
ランクルの愛し方はいろいろあっていい
FJブルーザーのBruiserとは、強い大男、乱暴者、荒くれ者といった意味をもちます。企画がスタートした当初は「The Unstoppable FJ」、つまり止められないFJと仮に呼ばれていたそうです。しかし完成する頃には、まるで野獣のような車になっていたので、FJブルーザーの名前がついたのだとか。
ヨンマルは日本でも動いている個体がかなり減ってきており、見かけることも少なくなってきました。そんな貴重な車を! という人もいるかもしれませんが、これもまたランクルの楽しみ方のひとつ。実にアメリカらしい仕立て方で、FJ45を蘇らせたというわけです。
SEMAショーという特殊なイベントでお披露目された車ですが、そこにはランクルへの最大限のリスペクトがありました。現代の最高の技術とパーツでリモデルされたFJブルーザー、実際に目にする機会はないかもしれませんが、走っている姿を動画でもいいので見てみたいものですね。
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