自動車の売却をするときには、必ず「査定」というプロセスが必要になります。車の価値を評価することで、売却する金額が決定されます。今回は、査定とはどのような仕組みになっているのか、実際にどのようにして金額が決まるのか、チェックするポイントはどこか、査定金額を上げるにはどうしたらいいのかなど、中古車の査定に関する情報をご説明します。
中古車は1台ずつ違う
中古車は、同じ車種、グレード、年式、走行距離でも、査定が異なる場合があります。これはなぜでしょうか? 車は、新車で購入してナンバープレートが付いた日、つまり登録された日から「中古車」となります。オーナーによって、乗り方も使用環境も保管場所も異なります。なので、車の状態が1台1台違うのは当たり前なのです。
例えば、屋内駐車場の車と屋外駐車場の車とでは、塗装などの状態に違いが出てきます。また、年間何万kmも走行する車と1ヶ月間で走行が1000kmに満たない車では、当然走行距離も異なり、たとえ走行距離が同じでも登録年数がまったく違うことになります。さらに、大切に扱われてきた車とそうでない車では、さまざまな部位に違いが出てくるものです。
車がどのようにして使われてきたか、乗られてきたかは、年式と走行距離だけでは判別しきれないため、査定を行いその車の価値を決定する必要があるというわけです。
日本自動車査定協会(JAAI)による査定方法
では、どのようにして状態が異なる車を評価しているのでしょうか?
中古車買取店などで行われているのは、「日本自動車査定協会(JAAI)」が提供している査定額の算出方法をベースにするものです。
このJAAIは、全国の自動車販売店などで適正な査定が行われるように査定の基準を提示している組織です。同時に中古自動車査定制度の普及に努めており、全国の買取店などで活躍している「査定士」の技能検定試験と、技術向上のための研修にも取り組んでいます。
参照リンク:>>日本自動車査定協会
査定額は「標準状態」と比較して決定する
それでは具体的にどのようにして査定が進められるのかを見ていきましょう。
参照リンク:>>査定とは?
標準状態とは?
JAAIが設定している「標準状態の車」とは次の通りです。
①外装・内装は無傷であること
②エンジン・足回りは走行に支障がなく良好であること
③車検の残り月数は3ヶ月以内であること
④走行距離は標準であること
⑤タイヤの残り溝は1.6ミリ(スリップサイン)以上であること
⑥修復歴や改造工作がなく、損傷減価要因(腐食・臭い)などがないこと
査定額の算出方法
では査定価格の算出について、その流れを説明します。
その査定標準価格を元に、エンジン・足回り・電装などを整備する「標準整備費」、販売店の標準的な見込み粗利と査定から販売に至る日数による標準的な減価をあわせた「標準諸掛」、保証期間・在庫回転・部品価格・外注価格、販売力などによる「特別調整」といった、買取店などが独自で設定する要素を加減します。
査定のときにチェックされるポイントは?
買取をする際には、決められた査定のチェック項目に従って、車の評価をします。オーナーからすれば、「車のどんなところをチェックして評価しているのか」が気になるところでしょう。
車を査定するときには、以下の項目が査定価格に反映されることになります。
・車の基本情報(車種、年式、グレード)
・走行距離
・外装(ボディカラー、キズ、凹みなど)
・内装(シート、フロアマット、臭いなど)
・エンジンルーム
・付属品、純正パーツ、装備品、オプション
・修理歴の有無
・定期点検整備記録簿
できるだけ高額の査定を受けるには、査定時に見るチェックポイントについて知っておくことが重要です。マイナスの評価にならないように事前に対処できるポイントもありますので、それぞれの項目について詳しく解説していきましょう。
チェックポイント1:車の基本情報
まず大まかな査定額の目安としては、「車種」「年式」「グレード」という要素があります。中古車オークション市場での相場によって上下するため、市場で人気がある車種であれば査定価格はプラスになる場合が多くなります。
年式は、新車の状態に近いほど中古車の価値が高いため、高年式(新しい車)であるほど査定価格は高く、低年式(古い車)であるほど価格は下がります。これは、年を経るごとに劣化が進んだり、故障の可能性が高まるからです。
またグレードも査定の基準となります。同一車種でも、グレードの高い車は装備や内装がよく、エンジンの出力などが高いため、査定価格が高くなります。しかし、排気量が大きなエンジンを搭載するグレードの場合、燃費のよいエンジンを搭載したグレードと比較すると人気がない場合も多く、査定価格が低くなる可能性があります。
注意すべき点は、年式は毎年1月1日に更新されるという点です。年式が1年古くなるだけで、査定価格がぐっと下がってしまうこともありますので、売却のタイミングを見極めることが肝心です。
また、モデルチェンジのタイミングも要注意となります。一世代前のモデルになってしまうとどうしても価値が下がってしまうので、新型車の情報もチェックしておくべきでしょう。ただ、この数年、コロナ禍やウクライナへの侵攻などの影響により、半導体や自動車部品の生産に大幅な乱れが生じている関係で、新型の発表が遅れたり、生産が進まずに納車されないという状況になっています。そのため、ランクル200など人気が急激に上昇している旧モデルもあります。
チェックポイント2:走行距離
走行距離は「その車がどれだけ使われたか、乗られたか=古いか」を確認するための指標です。走行距離の目安は「1年間で1万キロ」(軽自動車の場合は1年間で8000キロ)とされています。1ヶ月に1000キロ未満というのが、今の平均的な走行距離というわけです。
この目安から少なければ査定価格はプラス、多ければ「多走行車」としてマイナスとなります。
しかし、極端に走行が少ない車は、長期間にわたって修理状態にあったのでは? と疑われる場合もあります。また車はある程度走行することで、いい状態を保つことができるので、あまり走っていないと動作不良を引き起こす可能性も否定できません。その場合は、査定価格がマイナスになることもあります。
チェックポイント3:外装
車の外装は、査定価格を左右する大きなポイントです。例えば、ドアなどに凹みや擦り傷がある場合は当然査定の評価はマイナスとなります。
具体的には次のような評価となります。
外装の状態による評価
1)1センチ未満のキズ、凹み→減点なし
2)外板に交換跡、波状の修理跡及び塗り替跡のあるもの→マイナス10点
3)同色以外の一般色に塗り替えられた場合→マイナス100点
4)元色以外の特殊色に全塗装した場合→マイナス250点
5)爪の引っかからない薄い擦り傷及びタールの付着、水垢の汚れ→マイナス5点
再塗装が必要な場合の評価
カードサイズ(〜9cm)以下→マイナス10点
A4サイズ(〜30cm)以下→マイナス10〜20点
それ以上(30cm〜)→マイナス15〜40点
板金や修理が必要な場合の評価
A4サイズ(〜30cm)以下→マイナス10点
A4サイズ(30cm〜)以上→マイナス15〜50点
パネル面積の2分の1以上→マイナス20〜80点
場所によって評価点が変わる
キズや凹みは、ある場所に応じて評価の点数が変化します。例えば、大きな凹みがボンネットにある場合はマイナス50点ですが、ルーフにある場合はマイナス80点になってしまいます。減点の基準が場所によって細分化されているので、注意が必要です。
ボディカラーでも評価が異なる場合がある
外装に傷や凹み、修理歴がなくても、ボディカラーによっても査定価格に差が出てくる場合があります。例えば「ホワイト、ブラック、シルバー」といった無彩色は人気が高く、定番カラーとして査定価格がプラスになる可能性があります。逆にカラフルなボディカラーの場合は好き嫌いが分かれるため、プラスの査定に繋がりにくい傾向にあります。ディーラーの営業マンがホワイトやブラックなどのボディカラーを勧めてくる理由のひとつとも言えるでしょう。
チェックポイント4:内装
シートの汚れやへたり具合、フロアマットの汚れなど、内装の程度もチェックの対象です。とくにタバコの焦げ跡があると大きなマイナスになってしまいます。
また、車内に染み付いてしまったニオイはマイナス査定となります。自分は普段から乗っているので気にならないかもしれませんが、他人からすると気になってしまうものです。それが芳香剤だとしても、ニオイの存在自体がマイナスになってしまうのです。
ニオイの原因となる「タバコ」や「ペット」は車内ではNGにした方が無難です。また、査定の前に車用の消臭剤を使って何度か処理をしておくことをオススメします。ニオイ対策は芳香剤で隠すのではなく、元から断つ消臭を行うことが、マイナス査定を回避するためのポイントです。
さらに気になるエアコンのニオイなどもチェックしておきましょう。
チェックポイント5:エンジンルーム
エンジンルームについては、「エンジン、エンジンオイルの状態、バッテリーの状態、改造・修理の有無」などを見ています。
特にエンジンの不調や不具合は大きなマイナスになります。問題なくエンジンが始動し、アイドリングも安定していることが必須です。また、改造や修理の有無は、走行に深く関わる部分となるため、細かくチェックされることになります。
定期的なエンジンオイルの交換や、点検などを受けて、調子を整えてから査定に望むことをオススメします。
チェックポイント6:付属品、純正パーツ
装備品が故障していると、マイナスの評価となります。装備品には、エアコンやオーディオ、ナビゲーションなどが含まれます。しかし修理費が高額になる場合は、塗装や板金と同様で、修理に出さない方が無難です。修理したことで査定価格は上がりますが、修理費の方が高くなり、結果的には持ち出しが多くなってしまうことになります。
取扱説明書などの付属品は、捨てずに車と一緒にしておきましょう。次の購入者も付属品が揃っている方が好ましいものです。また、スペアキーなども揃っている方が望ましいでしょう。
購入時に追加したメーカーオプションやディーラーオプションは、プラスの査定になることがあります。査定時にはそのことを伝えてアピールしましょう。
チェックポイント7:修復歴の有無
車を売買するときには、修復歴の有無が買取価格に大きな影響を及ぼします。修復歴がある車は、事故歴あり(事故車)とも言われますが、中古車の流通では修復歴あり(修復歴車)で統一されています。
買取店に売却する場合、一般的には修復歴の告知が義務付けられています。故意に修復歴をごまかしたりすると、後から買取価格の減額を要求される可能性もあるので、注意が必要です。
ただし、事故や災害などによって生じた損傷に対するすべての修理が修復歴となるわけではありません。どのような場合に修復歴ありとなるかを解説していきます。
修復歴ありとはどのような状態か?
交通事故やその他の災害により、車の骨格部分の修理または部品交換した場合、修復歴ありと判断されます。骨格部分とは、車体の強度を保つための部分で、以下のことを指します。
・フレーム(サイドメンバー)
・クロスメンバー
・インサイドパネル
・ピラー
・ダッシュパネル
・ルーフパネル
・フロア
・トランクフロア
修復歴ありにならない場合は?
修復歴に該当しない修理とはどのようなものでしょうか?
結論から言うと、上記の骨格部分以外を修理した場合は修復歴にはなりません。例えばドアやフェンダー、トランクフードなどの損傷では、板金や交換を行ったとしても修復歴としてカウントはされません。
では、追突されてバンパーが損傷した事故の場合はどうなるでしょうか? 一見すると、修復歴ありとなりそうですが、フレームやトランクフロアなどの「骨格」部分に損傷がなく、バンパーのみの交換で済んだ場合は、修復歴にはなりません。しかし、事故の影響がフレームにまで及んでしまった場合は、修復歴ありとなります。
事故などで車が修理を受けたときには、修復歴ありとなるのか、それとも修復歴なしとなるのかを証明するために、損傷箇所や修理内容がわかる明細などを保管しておくことをオススメします。
参照サイト:
>>補修歴とは
チェックポイント8:定期点検整備記録簿
「定期点検整備記録簿」とは、法定点検(12ヶ月点検や24ヶ月点検)の内容を記録した書類のことを指します。これは健康診断の履歴のようなもので、その車が過去にどのような整備を受けたのかがわかるようになっている書類です。車の所有者、車体番号、登録ナンバー、点検整備日、検査責任者、検査時における総走行距離、オーナーの変更歴などが記載されています。この記録簿を見ることで、「車の基本情報」や「しっかりと整備がされてきたかどうか」をチェックすることができます。
ネットで相場をチェック
車を売却しようと思っても、いきなり買取業者に連絡するのはハードルが高いと感じる人も少なくないでしょう。インターネットで相場を公開している買取業者がありますので、そちらで自分の車がいくらぐらいの価格になるのかを事前に調べてみてはどうでしょうか?
中古車買取業者の相場表
買取の査定を受ける前に、自分の車がいくらくらいになるのかを知っておきたいというのは、オーナーに共通する思いでしょう。大手の中古自動車店では買取の相場をインターネットに提示しています。自分の車の年式や走行距離などを入力すれば、価格を教えてくれます。また過去の買取相場の最高価格と最低価格なども開示しているところがあるので、参考にしてみましょう。
ガリバー
https://221616.com/satei/souba/
グーネット
https://www.goo-net.com/kaitori/maker_catalog/
ユーカーパック
https://ucarpac.com/sell/search
査定価格を高くするには
査定価格はもちろん低いよりも高い方がいいと思います。高ければ次の車を購入する際にも負担が軽くなります。また、自分が乗ってきた愛着ある車が安く見積もられてしまっては悲しいものです。少しでも査定価格を上げられる、もしくは下げないためにはどうしたらいいでしょうか?
きれいにする
査定を受ける前に、車はきれいに洗車をしておいた方がいいでしょう。査定を担当する業者の担当者もきれいな方が心象がいいだけでなく、実際に汚れがある場合は査定が下がることがあるからです。
外装は洗車を行い、タイヤやホイールもきれいにしておきましょう。また内装は掃除機を掛けてクロスなどで拭き上げておくことをオススメします。
タイヤの溝はあったほうがいい
すでにお伝えしたとおり、タイヤの溝は1.6ミリ以上というのが標準車です。すり減ってしまった夏タイヤを履いているよりは、季節外れであったとしても溝がしっかり残っているスタッドレスタイヤの方が高値となります。逆に、どうせ売ってしまうからとすり減ってスリップサインが出ている夏タイヤのまま査定を受けると減額されることになります。
板金修理はしない方がいい
査定の診断ポイントでもお伝えしましたが、大きく事故の跡が残っているような場合は除いて、ちょっとした擦り傷のような場合は、板金修理に出す必要はありません。修理した場合の査定価格の上昇分よりも修理金額の方が高いことの方が多いからです。
買取業者は板金修理などでもネットワークを持っているので、修理金額を吸収できる査定価格を提示します。
売却のタイミングも見定めましょう
買取店が車を必要としているのは、もっとも車の売買が盛んになる3月の少し前。つまり、1年の中で1月または2月に需要が高まります。業者は在庫を増やしたいタイミングなので、買取価格も上昇する可能性があります。
また、9月は半期で転勤など生活形態が変わる時期なので、7月と8月も売却するにはまずまずの季節ということができるでしょう。
まとめ
今回は車買取の査定について、どのような基準があり、どのようなポイントで判断しているのか、査定価格を引き上げるにはどうしたらいいのかなど、具体的に解説してきました。査定を受けるタイミングや車の状態などを確認して、上手に買取を利用してください。
>>FLEXの無料査定はこちら:
https://www.flexnet.co.jp/kaitori
次回は出張買取についてご説明します。