ジャパンモビリティショー2023で発表されたGLOBAL HIACE BEV CONCEPT(グローバルハイエースBEVコンセプト)。次期型ハイエース? と噂されている車を、実際に会場で見てきました。
働く人のために機能を全振り
「耐久性と積載性を向上し、乗る人・働く人に優しい車」というテーマで開発されたこのグローバルハイエースBEVコンセプト。「ハイエース=働く人を支える車」であるという基本思想を骨太にしつつ、さらに安全で快適な運転をサポートしてくれる車になっているようです。
ボンネットは付いたが大きくスクエアなボディで使いやすそう
グローバルハイエースBEVコンセプトは、海外で販売されている300系ハイエースと同様にセミボンネット型のボディを採用しています。これにより全長は伸び、車幅も広がりました。のちほど実寸の比較も載せておきますが、200系のワイドボディ・スーパーロングよりも「大きくなった」と感じます。
フラットな床とスクエアな荷室
リアは中央で縦に分割された観音開きドアを採用しています。大柄なボディなのでリアドアもかなりの大きさです。床の高さは発表されていませんが、ドアはフロアレベルから開くので、高くまで荷物を持ち上げなくても済みそうです。
荷室スペースは、拡張された車幅と天井が絞られていないお陰で広さを感じます。ホイールハウスの張り出しも抑えられています。床面は本来助手席がある左側前方までフルフラットになっているので、長尺物の搭載も可能です。また、スライドレールを設置し、荷物ごと動かせるラックを備えているので、荷物の整理や積み下ろしを容易にしています。このレールは車内のレイアウトの自由度を上げてくれそうです。
これだけ広くなると「目的の荷物が見当たらない!」 という問題も発生しそうですが、荷室のどこにあるかを教えてくれるシステムも搭載しています。すぐに「どこいった? ないっ!」と探しものをする人にはもってこいかもしれませんね。
運転手の負荷を減らすレイアウトと仕組み
グローバルハイエースBEVコンセプトはキャブオーバー型ではないので、運転席の座面が低く乗り降りがしやすい印象です。また、助手席がなくフルフラットのフロアのため、どのドアからもアクセスが簡単。路肩に駐車しても、ウォークスルーで歩道側に降りられるので、安全の面でも優れたレイアウトといえます。
運転席は視認性に優れたメーターメーターとダッシュボード中央の大型ディスプレイが特徴的です。宅配業で問題になっている再配達を減らすために、配達先の在宅時間に合わせてルートを案内するシステムも提案されています。これが実装されたら、かなりスムーズになりそうですね。
グローバルハイエースBEVコンセプトと200系ハイエースのサイズ比較
今回発表されたグローバルハイエースBEVコンセプトは、200系ハイエースと比べるとどの程度の大きさでしょうか? ボディサイズや気になる車内の寸法を比較してみました。
まず、全長は200系スーパーロングに迫る5,280mm、全幅は200系ワイドボディよりも一回り大きい1,950mm、全高は標準ルーフよりもわずかに高い1,990mmと、それぞれ拡大しています。特に全長はセミボンネット型を採用したことで、ノーズ部分がかなり伸びましたが、衝突安全性を考えると致し方ないのではないでしょうか。ホイールベースはスーパーロングよりも10cm長い3,210mmとなっていますが、最小回転半径は5.5mに抑えられているので、スーパーロング(6.0m)よりも取り回しはよさそうです。
室内は、グローバルハイエースBEVコンセプトがシングルシーターを採用したことで最長3,490mmという空間を確保しています。運転席側の室内長は3,000mmを下回りそうですが、ボディが拡幅されているので実質の容積は上がっているようです。さらにBEV(バッテリーEV)の採用でフルフラットなフロアが実現し、荷物の積載は圧倒的にしやすいでしょう。
モデル | 全長(mm) | 全幅(mm) | 全高(mm) | ホイールベース(mm) | 最大荷室長(mm) | 荷室幅(mm) | 荷室高(mm) | 乗車定員 |
グローバルハイエース BEVコンセプト |
5,280 | 1,950 | 1,990 | 3,210 | 3,490 | 1,715 | 1,270 | 1名 |
200系ハイエースバン スーパーGL (標準ボディ・標準ルーフ) |
4,695 | 1,695 | 1,980 | 2,570 | 3,000 | 1,520 | 1,320 | 2名/5名 |
200系ハイエースバン DX (ワイドボディ・スーパーロング・ハイルーフ) |
5,380 | 1,880 | 2,285 | 3,110 | 3,540 | 1,730 | 1,635 | 2名/3名 5名/6名 |
多彩なボディバリエーションと世界的な展開も
今回のBEV化に伴い、多彩なボディバリエーションが検討されているようです。グローバルハイエースBEVコンセプトでは、いわゆる標準ボディのパネルバン仕様をL1H1として、ガラス仕様のL1H1ガラスバン、荷物の運搬に向けたロングボディ・ミドルルーフのL2H2パネルバン、大人数の送迎を可能にするロングボディ・ミドルルーフのL2H2コミューター、救急車などに使われるロングボディ・スーパーハイルーフはL2H3などが紹介されました。
このL数字H数字はボディサイズで、Lは全長、Hは全高を表しています。ちなみに欧州の商用バンといえば、メルセデス・ベンツ・スプリンターやフィアット・デュカト、VWクラフター、ルノー・トラフィック、フォード・トランジットなどが挙げられますが、いずれもボディサイズは同じ表記です。
次期ハイエースが待ち遠しい!
200系ハイエースはエンジンを運転席と助手席の下に置くキャブオーバー型で、短い全長でも室内長が取れるため、配送業や職人さんたちから厚い支持を得ていました。しかし、そんな200系もデビューからすでに20年近くが経過。海外では300系がすでにデビューしていますが、日本では300系ハイエースをベースにしたグランエースのみが販売されています。
キャブオーバー型の200系はスペース効率がいい反面、ノーズのある車よりも安全性の面では劣ります。また、自動運転などの導入は現状のプラットホームでは対応が難しいでしょう。
今回のグローバルハイエースBEVコンセプトが、すぐにそのままの姿で日本の道路を走るとは思いませんが、そろそろ200系を卒業して、新型ハイエースの登場を望みたいものです。