LEG4はシェムリアップ → コンポントム、325キロを走破!
哀川翔選手率いるFLEX SHOW AIKAWA RACING TEAMの一行は、世界遺産アンコール遺跡群に隣接した観光都市、シェムリアップの町で一夜を過ごした。あくる16日はホテル前から競技車両が一斉にスタートし、城郭遺跡アンコールトムの中をコンボイで駆け抜ける趣向なのだ。
アンコールワットは12世紀に建立された石造りのヒンドゥー教寺院。このアジアクロスカントリーラリーでも何度かゴールセレモニーが行われた場所として馴染み深い場所だが、今大会の最終目的地は首都プノンペン。今回は通過するのみだが、ラリーの一行はこうした古い遺跡群をかすめながら南下していくのだ。
少々トラブったものの、アンコールトムを無事通過
我々メディアチームのクルマはこのコンボイから先行し、アンコールトムの内側に入ろうとしたものの、寸前で警備員に「許可がない車は侵入できない」と制止され、万事休すの状態に。
それでもラリー車のコンボイが正式に許可をとって行われていることを根気よく説明していると、無線でやりとりしていた警備員の顔が突然笑顔に。「OK、許可が出ていた。行っていいぞ」。
とはいえ、もうコンボイが到着する直前である。アンコールトムに急ぎ入場し、観世音菩薩の彫刻が施された南大門をくぐったところで車を降りると、もう先頭の二輪集団が目前に迫っていた。
二輪、サイドカー、そして四輪と総計50台以上の競技車両が列をなして、800年近く前に作られたアンコールトムの中を駆け抜ける様は圧巻だ。
続く四輪のコンボイを撮影していると満面に笑みを浮かべながらステアリングを握る哀川選手と助手席の保井選手の顔を確認することができた。
こういった経験も、国境を越え、各地のランドマークを経由しながら移動していくアジアクロスカントリーラリーならではの魅力と言えるだろう。
これは道じゃない…、まるで川だ!!
さて、コンボイでリエゾンを走り切った一行を待ち受けていたのは一面に緑のライスフィールドが広がる美しい農村だ。SSのスタート地点にあとからあとから到着する色とりどりのラリーマシンが珍しいのか、村の人たちもぞくぞくと見学に集まってくる。
そして午前8時、全ての二輪勢がスタートしたのちに四輪のマシンが前回LEGのデイリー順にスタートしていった。哀川翔選手のスタートは18番手、スタートの合図とともに勢いよく飛び出していった。
ところが、この日のSSは水地獄だった。距離は147.91kmとやや短めの設定だったが、開始早々20数キロでトップ集団からもスタックするクルマが続出。前半から極悪サバイバルレースの様相となった。
スタック地獄の修羅場となった地形は「ウォーターベッド」と呼ばれるあぜ道だ。カンボジアやラオスの一部で見られるものだが、あぜが田んぼより低いために雨が降ったりして水量が増すと溢れた水が流れ込み、川のようになってしまう。
この日は背の高いオフロードマシンでも走行時に水がボンネットの上まで襲い来るほどの水深だ。おそらく、日本のオフローダーでもほとんど経験したことのないような「川」のような道がひたすら何キロも続いていく。
そこを果敢に攻め続けた哀川翔選手だったが茶褐色の水面からは地形の深さが全く読み取れず、難しいコース選択の中ついに深い穴につかまり、スタックしてしまった。
その様子を哀川翔選手とナビゲーターの保井隆宏選手に語ってもらった。
【Day.5】哀川翔氏と保井隆宏氏へのインタビュー
Q:どんな状況だったのですか?
哀川「すごかったよ。もうすさまじいなんてもんじゃなかったよ。水はランドクルーザープラドのボンネットの上まで来たかな。あれはもうあぜ道じゃなくて川だよね。走っている間、ドアの隙間からどんどん水が漏れ出してきて、車内はもう水浸し。靴もビショビショだよ。でも、そんな中でもプラドはどんどん前に進むんだよね。さすがだと思ったよ。TOYOのタイヤがいいね」
保井
「僕らが到着した時は既に4、5台がスタックしていて、地元の人がこっちだこっちだって迂回路に誘導してくれたんだ。
見ると確かにオンコース上にはスタック車両がいるので、その迂回路に行ったけど結局行けなくて本コースに戻ることにしたんだ。ハマったのはその時だね。
2番手のTRDのマシンとか、6番手のいすづMu-Xとか、既にスタックしているマシンを避けたんだけど、ズボッてハマっちゃってね…。
そこいらじゅう、茶褐色に濁った水で、もうどこがどのくらいの深さなのか分からなかったんだけど、ウォーターベッドの脇の用水路みたいな深みに落ちてしまったようなんだ」
哀川
「もちろん、抜けてった人もいたよ。でもありゃ運だよね。どこで本コースに戻るか、そのちょっとの違いが天国と地獄の差になってたよ。俺が走った中じゃあ一番ひどいね。でもね、深いウォーターベッドをひたすら進んだマシンが抜けていったりしてるんだよね。わからないよね、あれは」
保井
「スタック後は翔さんとウインチを使って、木にかけてひっぱってたんだけど、そのうちに地元の人がおしてくれたんだ。木の丸太ん棒でフロントをあげてもらったり、ウインチだけじゃなく、地元の人の助けがあって脱出できたんだよ」
哀川
「や〜、あれはありがたかったね。俺、感動したもん。ありがとう、ありがとうって言ってね」
保井
「で、そこは脱出できたんだけど、そのあともず〜と川の中を逆走しているような感覚。そしたらまた別なとろでスタックしちゃったんで、そこもウインチ使って出て苦闘の末に脱出したんだけど、それだってまだSSの前半区間のさらに前半みたいなところなんだ。
そうこうしているうちにSSに設定されているマックスタイムに間に合わないような状況になって、後半区間にも同じようなウォーターベッドがあるっていう話だったから、時間的にも状況的にも厳しくなってきてね」
哀川
「そうだよ。このラリーは完走することに意味があるんだから。カンボジアの名もなき村で車を水没させたり、エンジンが逝っちゃったりしたら大変じゃない。だから、もうエスケープしよう、悔しいけど、ここはクルマをいたわろうって、ふたりで決めたんだ。いい判断だったと思ってるよ。中央自動車大学校の生徒だって、ピットでずっと待っててくれたんだから」
ペナルティタイムは加算されたが、順位落ちを最小限に留めた
というわけで、FLEX SHOW AIKAWA RACING TEAMのランドクルーザー プラドはこの日のSSをキャンセルしてエスケープ。ペナルティタイムは加算されたものの、クルマはほぼ故障なく温存させ、明日以降の終盤戦に臨む事となった。
順位も他の多くのラリーマシンがスタックしていたのでさほど変わらず、19位と1番手落ちたのみ。残すところあと2日、哀川翔選手の終盤の走りに期待したい!
【画像ギャラリー】SHOW AIKAWA Racing AXCR2018 [8.16]
AXCR2018 過去のレポートはコチラ!
チーム概要
- チーム名:FLEX SHOW AIKAWA Racing
- 参加車両:TOYOTA LAND CRUISER PRADO 150
- ドライバー:哀川翔
- チームアドバイザー:奴田原文雄
- チームディレクター兼プロデューサー:荒 行浩(FLEX)
- チームマネジメント兼メディアプロデューサー:吉岡 市雄(マジカル)
- 公式インフォメーションweb:http://www.magicaltv.net/flex_racing/
- 大会Webサイト:ASIA CROSS COUNTRY RALLY 2018
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